ryosuke

真昼の暴動のryosukeのレビュー・感想・評価

真昼の暴動(1947年製作の映画)
3.9
一見物腰柔らかに見えるマンジー(ヒューム・クローニン)が食堂に現れた瞬間に、囚人たちが一斉に静まり返り挙動がストップする壮観な光景から、彼が囚人に齎してきた恐怖が垣間見える。
作業場の粛清シーンが白眉。凶行を覆い隠すためにひたすら単調に手を振り上げては下ろす囚人たち、一定のリズムで鳴り響く金属音、バーナーを持って四方から迫る主人公たちによってつくりだされるイメージが禍々しい。
所長や医者の「ここしか居場所はない」「選択肢はない」といった台詞が塀の中と外を相対化する。所長はあくまで公務員としての「凡庸な悪」に過ぎないということなのだが、役割、命令の範囲で仕方なくという訳ではないのがマンジーなのだ。
そういう訳で、原題の“Brute force”は囚人の暴動のことかと思いきや、医者の台詞から判るようにマンジーの持つ権力のことであった。
彼が遂に肉体的暴力を画面内で見せるシーン、レコードの音量を上げて(そういえば囚人たちも音で暴力を隠していた!)迫ってくる恐ろしさ、禍々しさが印象深い。
そんな彼が遂に所長の座を手にしたと知った囚人達の「ヤー」のシュプレヒコールは大迫力。
ギャラガー(チャールズ・ビックフォード)が「全ての者はしかるべき制裁を受ける」と意味深にマンジーに述べたように、ついにマンジーは業火と共に処刑されるが、皮肉にも計画の正確な遂行を断念したギャラガーの車両突撃のせいで扉は開かず無念な結果に終わる。
ラストシーン、娑婆の人間であるはずの医者が「誰も逃れられない」と語る姿が、檻の中に閉じ込められているようにも見え、問題は監獄から社会システム全体へと広がっていく。
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