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西瓜の1000のレビュー・感想・評価

西瓜(2005年製作の映画)
4.0
『西瓜』はアンチ・リアリズムであり、アンチ・ミュージカルである。アンチ・ラブストーリーであり、アンチ・ポルノでもある。
『西瓜』は禍々しいまでに悪魔崇拝的であり、多重レイヤー化した人間の営みを揶揄して止まない。ナンセンスによって裏打ちされた血で血を洗う(精液で精液を洗う??)ような魔術的映像は、性の目覚めを迎えたばかりの少年少女の悪夢にほかならない

「神の不在」が「神の不在」の不在を伴うのと同じように、『西瓜』に描かれる「愛の不在」はそれ自体が「愛の不在」の不在を伴う。信仰の対象たる神や愛、あるいはそれらの「不在」をも失った獣として、そこにようやく真の人間が立ち現れてくる。これはスーツケース一つ開けられない人々の物語であり、西瓜の約90%を構成する水分によって乾きを満たそうとする人々の物語である

『西瓜』という芸術的吐瀉物を前にした我々はまず困惑し、それをどう受け止めれば良いものか(★5.0か★1.0か)途方に暮れ、助けてくれる見込みもない存在に助けを求め、最終的にそれを笑い飛ばすことで、かろうじて鑑賞者としての自己同一性を保つ。アダルトビデオに対してオナニストが常に被征服的立場にあるのと同じように、『西瓜』は鑑賞者の老若男女を問わず、それを飲み込み、グロテスクなまでに当事者化させる。『西瓜』は紛れもないクソであり、超弩級の傑作である。ポスト『田園に死す』であり、『ララランド』である。
こんなものが2005年興行収入第一位になる台湾という国が、心配でならない
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