このレビューはネタバレを含みます
子供の頃に見た記憶はあったけど、球体女と三枚おろしニキの印象が強すぎて結末を完全に忘れていました。
今回見返しましたが、面白かったです。
まずなによりグラントね。グラントのことが好きになっちゃった。
嫁のことを猛烈に愛してるんだけど、なんか嫁は塩対応で愛を感じない。そんな中で女友達に手を出しそうになるけどあんまりしっくり来てなさそうで、そういうのもいい。
で、なんか女友達とバタついてたら宇宙生物に襲われるわけだけど、ここからが面白いところです。寄生グラント、なんと相変わらず嫁のことが大好きなんです。
すでに宇宙生物に脳みそハックされてる状態にもかかわらず、嫁からセクシーなお誘いを受けて「はわわ…っ」てなってるグラント。かわいいよグラント。
宇宙生物の本能で嫁を宿主にしてしまいそうになるけどそれを「グッッッ」と抑えて「仕事に行かなきゃならないんだ!!!」と騒ぎながら家を飛び出すグラント。
犬を殺したこと、女友達の体を借りたことをバツが悪そうに嫁に弁解するグラント。
宇宙生物に本能を支配されながら、嫁への愛着が人間性として最後まで残っていることが、グラントの愛がどれだけ深かったを示している。
脳をいじられても消えない愛。最後まで残る愛。嫁とその幼馴染の関係を不審に感じているが故に妻を「娼婦」「クソ女」となじりながら、最後までミニ寄生生物で人格破壊して支配下に置こうとはしなかったグラントの悲しい愛。
愛している人が、自分と同じくらい自分を愛していてくれたら、どれだけ幸せか!
グラントは何度でもそれを確かめようとする。でも一回もそれは叶わない。一周回って嫁が薄情に見えてくる。
大体、一度冷たく断った義務感からグラントに色仕掛けして、それが成功した日に職場で「夫と素敵な時間を過ごした」って自慢する嫁の二重人格っぷりに眩暈がする。この嫁が脳ハックされていたら、最後に残る人間性はなんだ?愛ではなかろう。
嫁の方がよほど何を考えてるかわからないんですよ。クリーチャーの方がよっぽど人間してるんですよね。
この映画はグラントの叶わぬ愛の物語なんです。自分を愛してないくせに、義務感から思い遣っているフリをしてくれる嫁の心の中に、本当に薄紙一枚ほどの愛もないのかを探り続けるグラントの物語なんです。
ミニ寄生生物に寄生された住民はグラントと脳の回路がワイヤレスで繋がる(つまり中身がグラントになる)から、グラントには共に戦う仲間が実際にはいない。寄生から守った嫁は自分をカケラも愛していない。誰も自分に寄り添ってくれない。
グラントは10億年間この孤独と付き合ってきたわけです。いや、愛してくれない嫁を愛してしまった元祖グラントにうっかり寄生してしまったものだから、そこで初めて孤独を認識したのかもしれない。
愛しいグラント。誰も君を愛さない。