チーズマン

スリザーのチーズマンのレビュー・感想・評価

スリザー(2006年製作の映画)
3.7
「ごっつええ感じ」

という、ダウンタウンのコント番組が昔ありました。
ジェームズ・ガン監督のユーモアセンスはそれに近いのではないかと思います。
キモっ・怖わっ・悲しっ、と思いながら同時に笑ってしまう感じ、そのシュールさ。
なので今作はホラー映画の“ごっつええ感じ”を観てるようでした。

ちなみにそう思ってみれば、今や監督の代表作となった『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』も、超ポップな“ごっつええ感じ”です。
特に最初のグルートなんかもう。


内容は、宇宙からやってきた生物が人間に寄生していくというそれ自体は珍しくもないジャンル映画ですが、ポップソングの使い方やユーモアセンスでやはりこの監督らしい楽しさの溢れる一味違う作品になっていました。

ゴア描写も容赦ないですが、宇宙生物に寄生されて宿主となったマイケル・ルーカー演じる“グラント・グラント”さんの気色悪さでグイグイ引っ張っていきます。

現れる度にグラントさんの容姿が変なことになっていくので、早く次の姿がどうなっているのか見たくなるのです。
彼は今作の華と言っていいでしょう。


化け物に変わっていっても妻を愛し続けるグラントさんの、とにかく“不憫な”ところがこの作品の味ではありますが、最後まであまりに可哀想なままで終わってしまいます。
そのせいで、主人公達の話よりもグラントさんの「妻への愛を利用されたあげく捨てられた男の話」の方が残ってしまうので、ポップソングでいい感じに爽やかに終わられてもちょっと首を傾げてしまうのです。
せめてほんの少しでも何か救いを与えてあげて欲しかったところです。
まあ、でも人間を真っ二つとかにしてるんでしょうがないですかね…。


ただ、ジェームズ・ガン監督もそう思ったのか、後に『スーパー!』という傑作を作りますが、あの作品はある意味でグラントさんの立場から今度は彼の救済を描いたような話とも言えるのが面白いですね。

なので、そこだけ見るとジャンルは全く違いますが『スリザー』と『スーパー!』この2作品は裏表のような関係じゃないでしょうか。
セットで観ても面白いかもしれません。


まあしかし思ったより楽しめた作品、良かったです。
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