妻を亡くし、大学受験を控えた二人の子供を抱えた男。
居酒屋でビールを煽りながら、フラストレーション満タンでイライラしている50歳の男(光石研)の様子から始まる本作。
のっけからいいですねぇ。
妻も子供達も飼い猫も、次々と自分のもとを去っていく夢を見て寝汗をかいている男、このシーンも堪らなくいいですねェ。
石井裕也監督も光石研もこうした体験があるのだろうか?実にリアルに描かれている。
そう思って石井監督に関してググってみたら、彼は7歳の時にお母様を亡くし銀行員のお父様に育てられたようです。なるほどと思います。
お父様にダブらせたかどうかは分かりませんが、根は真面目だけれど上手く人生を渡れない男がよく描かれています。
「ダンディを気取るのは男の義務」なんてセリフが出て来ますが、それって痩せ我慢の事じゃないの?
上手く行かないことばかりでジタバタするのがダンディなの?
痩せ我慢をしつつ、そうしたことを口にしつつ、ダンディを勘違いしつつ、男は泣かないものだ!なんて言い、でも道を外さない(外せない)真面目な男は小さく映るかも知れないけれどとても愛しく感じます。
最後に親友同士サシで瓶ビール飲みながら泣くシーンもいいねぇ。
しみじみでもなく、さめざめでもなく、すすり泣くでもなく、こうした男の泣く様をどう表現したらよいのか?光石研は上手い!
かねてから美味そうなビールを飲むシーンを映画の中に探している私ですが、このシーンのビールは苦いだろうなぁと思います。ジョッキではなく瓶ビールをコップでやっているのが凄くいいですね。
本作はよく出来たオヤジの飲み屋話です。