ひでやん

椿姫のひでやんのレビュー・感想・評価

椿姫(1937年製作の映画)
3.7
高級娼婦と純情青年の悲恋物語で、舞台、オペラ、バレエ、映画など、幾度も上映され続けてきた名作。

パリの社交界を描く前半にノレず、浪費家のマルグリットに嫌悪感を覚えたのだが、彼女へのイメージは徐々に変わっていった。

無遠慮に高笑いし、舞踏会でバカ騒ぎするパーティーピープルの中で、マルグリットはどこか一線を引いているように感じた。贅沢三昧で享楽に耽るほど身体の衰弱と虚無感を覚えるが、華やかな社交界でしか生きられない。

そんな彼女は貴婦人のように上品で美しく、下品な喧騒の中に咲く一輪の椿。花のように儚げで、愛か金かの普遍的テーマに揺れる。

自然に囲まれた田舎で暮らす後半から彼女の幸福を願ったが、その先には悲劇の予感しかしなかった。金より愛を選ぶという単純なストーリーではなく、愛する人を滅ぼさないために、滅びの世界に身を置くという犠牲が切ない。

そして、ラストシーンで魅せたグレタ・ガルボの演技が素晴らしい。最期の力を振り絞り、愛する人の前で美しく在り続けようとする彼女が愛おしく思えた。
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