せーじ

トニー滝谷のせーじのレビュー・感想・評価

トニー滝谷(2004年製作の映画)
4.5
161本目はフォロワーのかじられるさん(と、うめまつさん)にリクエストを頂いたこの作品を鑑賞。
原作は未読。というよりそもそも、紹介されるまで存在すら知らず。
(不勉強で申し訳ないです)

なんですかこの作品は…。

観ている間、とても端正な彫刻を愛でているような気持ちになった。
カットの撮影構図、カメラワーク、色調、音楽、ナレーション、そして役者さんたち…この作品を構成する要素すべてに全く無駄が無く、ほぼほぼ完璧に物語の世界が構築されていた。特に秀逸だと感じたのは、カメラの使い方。右から左へと移動しながら丁寧に物語を紡いでいくというやり方はもちろん、「必要な部分しか見せない、写さない」ことを最大限に活用し、徹底的にそれを貫き通した撮影に思わず見惚れてしまった。凄すぎる。

また、物語はまさに今独りで時代を跨ごうとしている自分にもぐっさりと刺さる内容で、鑑賞後は深い切なさと余韻を味わうこととなった。
あの結末はどういうことなのだろうかと考えれば考えるほど、簡単な言葉では言い表せない"何か"が自分の心の中にずっしりと重みを増すような、そんな気持ちになってしまう。

というよりも、こういう作品について何か書こうとすればするほど、作品の本質からどんどん離れていくような気がするのは自分だけだろうか。100の言葉を使っても0.000001くらいしか捉えていないような気がしてならないし、言葉を増やせば増やすほど小数の桁が増えていきそうな気持ちになってしまう。それよりも今は"独りで"ぼんやりとしていたい。そう思わせてくれる作品であるように感じました。

75分と短く、あっけなく終わってしまいますが(このあっけなさも作品を構成する何かの一部なのではないかなと思います)非常に端正につくられた作品であり、鑑賞後は濃厚な余韻に浸ることが出来る作品であることは間違いないと思います。
ぜひぜひ。

かじられるさん、ありがとうございましたm(__)m
せーじ

せーじ