とても鮮烈な画作り。建物などの美術、ライティング、特撮が凝っていて、後世に大きな影響を与えたことがすぐわかる。最近僕が観たものだと、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』が「“っぽい”な」と感じた。
一方で、ストーリーはちょっと荒く、SEやBGMも含めた過剰な映像演出はそれを補う意図があるのではと勘ぐってしまう。この監督の他作品を観ていないので何とも言えないが。
最初の殺人で犯人らしき腕が出てきたり、謎解き的な展開が散りばめられるのに、ラストの展開はある意味「あ、そうなのね」と肩透かしのように感じられた。物語がかなり進んだ段階まで、主人公スージーが問題の当事者意識をあまり持っていないように見えるのも謎。どちらかというと、脇役のサラのほうが“渦中”に巻き込まれるけど、観客としては彼女に感情移入はしにくい。
とは言え、総合的なインパクトが大きいことは時代を差し引いても理解できる。公開当時の日本では社会現象レベルでヒットしたという事実が、この作品のパイオニアとしての素晴らしさを物語っている。今ではありふれて見えるコンセプトや映像表現の意図が、当時さぞ新鮮だったのだろう。
実はルカ・グァダニーノによるリメイク版が観たくて、その予習でこちらを観た。続けて観るかはわからないけど。