茶一郎

サスペリアの茶一郎のレビュー・感想・評価

サスペリア(1977年製作の映画)
4.4
 このバレエ学校に魔女がいる!?
 赤、緑、白と黒、強烈な極彩色に彩られたオンナだらけの悪夢の世界。「決して、ひとりでは見ないでください」というキャッチフレーズの元、当時は観客に1000万円のショック死保険がかけられたという宣伝も今や伝説として語られる。
 ロックバンド、ゴブリンによる「悪魔的」としか表現できない、観客を不安に追い込む悪意剥き出しの音楽が流れる中、女性が一人、また一人と残虐に殺されていく。逆三角形は悪魔の印なのだ。

 舞台となる西ドイツにある恐怖は、監視社会の恐ろしさ。学校の秘密を知った女生徒はすぐに知られ、殺されてしまう。「ずっと見ていたぞ」とこの監視は、実に「魔女」によるもので、劇中、異常に引いた画が度々出てくるのは、まるで魔女が「魔法の鏡」を使って姫を常に見張っているようだった。
 そして、主人公が魔女により飲まされる血の色の赤ワイン、これを「毒リンゴ」に置き換えると、今作はジャッロ版『白雪姫』なのだと気付く。しかし、この『白雪姫』に王子様のキスはなかった。少女は、自分の力でこの学校の秘密を暴き、魔女を見つけ出さなければならない。

 ワンカットワンカット止めて見たくなるほどの美しさ、女性を対象とした鮮烈な残酷描写。アルジェント初のオカルトホラーミステリーは、最恐の『白雪姫』であり、紛れもない傑作ホラーでした。
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茶一郎

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