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くまのプーさんのmendeのレビュー・感想・評価

くまのプーさん(2011年製作の映画)
4.1
大人(私)の汚れた心でも、なごませてくれるプーさん。
小学生のころ、私の名作は石井桃子訳の『くまのプーさん』だったので、個人的に思い入れたっぷり。原作ファンの中にはディズニーの絵柄自体に拒否反応がある人もいるようで、自分もE.H.シェパードの挿絵が好きだけどディズニーはディズニーとして見ている。

ディズニー作品のプーさんは多くの映像作品があるけど、私はこの2011年版がもっとも面白いと思う。完全保存版などと比べると原作からの改変は大きいし、ドタバタ感が増しているが、プーさんのおばかさんな世界という原作のエッセンスをしっかり把握している。

プーさんのかわいさは、おばかさんであることとほぼ同一で、クリストファー・ロビンが「ばっかなくまのやつ!(Silly old bear!)」=こいつ、なんてかわいいんだろうという気持ちとほぼ同じ感情を観客(読者)も抱く。
おばかさんなのはプーだけじゃなくてピグレットもティガーも同じ。登場人物の中では賢いとされているアウルやラビットも同様で、もっといえばクリストファー・ロビンも多少字が読めるくらいでほぼ同じようなもの。つまりは全員おばかさんで構成されている世界だ。
大人である観客(読者)はかわいい子どもたちのおばかさんなやり取りを見守っている。

この映画の中では、特に大きな穴にプーやラビットなどが落ちてしまうシーンが特におかしい。ちなみのこのエピソードも原作にはないが、ほとんど不条理ギャグのドタバタ劇。このクレイジーなやりとりはマルクスブラザーズのようだ。

子ども向けの物語は登場人物が学んで成長していくものが多い。ところがプーさんには教訓も学びも成長もない。そこがいい。
ただプーが大好きな大好きなはちみつより、優先させる行為があって、ちょっとグッとくる。

ズーイー・デシャネルの歌や、書籍が原作だということを強く意識させるフォントの扱いなどもかわいい。
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