垂直落下式サミング

愛と青春の旅だちの垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

愛と青春の旅だち(1982年製作の映画)
4.2
はじめてみました。今年で定年の職場最長老おじさんが教えてくれたオススメの一本。同時上映の『食人族』は微妙だったけど、これは最高だったらしい。二本立て映画館が一般的だったという30余年前かあ。ジェネレーションギャップ。
タイトルから連想される恋愛要素はそれほど重要ではなくて、航空機パイロットを育成する空軍士官学校に入学した若者たちが、教官のしごきに耐えながら成長していく青春物語だった。
主人公が教官にはじめて本音を漏らすところ、卒業生は自分より階級が上がるから軍曹が敬礼するところ、女の子が障害走コースの縄登りを超えて完走できるようになるところ、印刷所のラストシーンでなんかいろんなことが許されるところ、古めかしいけどとても好き。楽観主義的な良心に心が洗われる。なるべく若いうちに尊敬できる大人に出会えたら、その人生は幸せだと思う。
過酷な訓練を耐え抜いたものだけを仲間と認めて、そいつら以外はドロップアウトの使えないノロマ。常軌を逸した肉体的試練のみによってこそ、青年から大人への精神的成長がなされる。軍隊気質ってやつ。案外こういう危険思想が性分だったりする。
リチャード・ギアは、あんまり育ちのよくない男だし、訓練学校のなかで隠れて商売するし、彼女には理不尽にキレるしで、前半は善い人間ではなかったが、父親とおなじクズじゃないことを証明するためにここにいるんだと、自分の殻を破って頑張っていた。
でも、ちょっと電話が繋がらないくらいで捨てられたとか愛してないとかわめく女は嫌。平気で「堕ろせ」とか言う主人公もさすがの冷徹っぷりだしな。同級生はいい奴だったけど、わたしはパイロットになるあなたが好きだったのよっていうオチは悲しすぎる。
その点、リチャード・ギアとデブラ・ウィンガーの情事については、抑制の効いたものだった。二人はお互いの心情や思いを素直にぶつけながらも、現実的な目線で真剣な話をしており、描かれる男女交際哲学は道徳的なものだったと思う。 
鬼軍曹役のルイス・ゴセット・ジュニアは、身長193センチの長身俳優。そんなに筋肉質なほうではなくて、シャツ一枚になると普通のおじさんっぽい中肉中背にみえるから、映画をみていても気にならなかったけど、卒業式のシーンは背筋を伸ばしているから、一人だけデカさが際立っていた。空手もキビキビ。