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エンジェルのNMのレビュー・感想・評価

エンジェル(2007年製作の映画)
2.8
田舎町に住む少女エンジェル。お姫様生活を強く夢見る。
本が好きだが勉強は嫌い。気が強く、決して他人に屈しないので、学校も嫌い。変わり者で、シングルマザーである母や叔母を心配させる。

ある日書き上げた小説を出版社に送ると、人生は一変。このままエンジェルは幸せになれるのか……。


ストーリーはとても分かりやすい。テンポ良く進み、飽きる間もなく終わる。人物の性格も分かりやすい。マンガを読むように観られる。

発行人の妻役・ランプリングは流石の演技。この頃から役どころも見た目も殆ど変わらないのは、日本で言えばやはり樹木希林かもたいまさこのよう。

舞台化された作品の演技はそれらしく感じた。人が死ぬ時に、観客によく分かるようにバタッと大げさに倒れるのは昔の方が顕著だったはず。

主演のガライは、若々しくパワフルさがあり、エンジェルそのものに思える。泣き顔や寝顔も美しい。独りになり精気を失った表情もまた良い。

ノラの文学に対する崇敬は素晴らしい。エンジェルに仕えることが「文学への美しい奉仕」だと考えた。大物の予感を感じさせる。ノラは器が大きく、何事にも理解や愛情が深く、その言葉通り母のように夫のようにエンジェルを支える。

エンジェルの「芸術家には信頼と支えが必要よ」という台詞も良い。すぐには認められないものを貫徹させるなら、誰しもに必要。エンジェルにも。

エンジェルとエスメの、美を見る目が大きく違うことはその後を予感させた。
思えばエンジェルは、エスメの絵を勘で褒めた。それをエスメは、彼女こそ理解者だと感じてしまった。

エスメもダメ男ではあるが、日々感じる強烈な劣等感には、同情の余地もある。
あの椅子がキュルキュルと現れた瞬間が恐ろしい。「巨大な墓場」と表現していた通り、彼はもう一生ここから出られないことを悟った。

たまにCGもあるが、リアリティを求めるタイプの作品ではないので気にならない。

ドラマティックで華やかではあったが、小説のように思い通りの人生を送れなかった、ある女性の激動の物語。
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