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チャイナ・シンドロームのクレセントのレビュー・感想・評価

チャイナ・シンドローム(1979年製作の映画)
4.0
いつの時代もそうだが、社会問題を描く映画では決まって社長は悪者だ。この映画も社長は悪人だ。利益を守るために最後まで真実を隠す。邪魔者は消すのだ。社長は絶対的な権力をもち、大体悪人ずらをした役者が社長をやる。日本で言えば悪代官だ。いつも社長は部下に悪だくみな命令をする。彼を呼び出せ。要求を入れてやろう。けが人を出したくない。要求は簡単ですよ。彼の発言をテレビで流すか放射能を振りまくかです。良い役の人間が答える。そこで社長はそばに突っ立っている部下に聞く。それは可能か? 部下がすぐさま答える。バルブを開けるだけでできます。この部下も能無しで、社長の前ではまるっきしダラシナイ。今の彼は万能です。だから彼が放射能をバラまけば発電所は土で埋めることになります。聞いていた社長は怒り狂って遮った。彼に言え。好きしろと!責任はとれませんよ!部下が反論の真似をする。そこで社長は平然と言う。代案がないじゃないか。10億ドルを捨てるよりはマシだ。それに時間稼ぎにはなる。その間打開策を考えるんだ。すると困っしゃくれた部下が言う。記者が来ますよ、社長。だったらお前が記者を抱き込め。何をしてるんだ。職務を果たせ。できんことは言うな!できることを言え!てなことで、話はどんどんと悪の道にエスカレートしていくのである。この話は最後のほうでドンパチがあったり、また社長が例によっていなくなったりしてマスコミが騒ぎ立てるが、それもレポーターが出る間もなくCMが入ったりして、テレビ局のお粗末さを皮肉ってるところがなかなかいい。40年も前の映画なので善悪がはっきりしていて、単純である。そこへいくと現代ではより複雑化して社長は単なる悪代官ではなく、その人間味を引き出し、また能無しの部下はもはや過去の遺物となり、やり手の部下に様変わりしてきているのである。
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