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チャイナ・シンドロームのおーたむのレビュー・感想・評価

チャイナ・シンドローム(1979年製作の映画)
4.2
多忙かつ体調不良で全然映画見れてないなか、なんとか見れた一本。
ど真ん中の社会問題告発型でありつつ、きちんと魅せてくれる作品でした。

テーマは原発。
テレビの取材クルーが、まさに取材をしているその時に起こり、沈静化した事故について、クルーと当事責任者の双方が真相の究明に向かうが…という話です。
強いメッセージ性はあるものの、それ一辺倒というわけではなく、スリリングだったし、ドラマもありました。

スリラーとしての側面を支えているのは、原発の存在です。
特に、日本で今生きている人にとっては、現実感を持った、しかも災害級の脅威ですから、フィクションで見慣れたのとは感触の違う恐怖を感じました。
一方、ドラマの部分を牽引するのは、原発の管理責任者、ジャック・ゴデル。
彼は、利益優先で動く原発側の登場人物の中では、唯一良識的な人物で、自身の職場や地域住民のために、原発側の杜撰な管理体制を告発しようとします。
自身が従事する仕事への誇り・愛着と、社会に対する正義・誠実さとの間で板挟みになり、それでも事態を打開しようともがくゴデルの姿は悲痛で、どうにか報われてくれと思わずにはいられません。
名優ジャック・レモン、渾身のパフォーマンスだったと思います。
これでオスカーを逃すなんて、余程の対抗馬がいたんだろうなと調べてみたら、受賞は「クレイマー、クレイマー」のダスティン・ホフマンでした。
うーむ。こりゃ、相手が悪かった。

クライマックスは、意外に人工的な展開になりますが、無音のエンドクレジットと合わせ、悪夢的なインパクトが生まれていて、この物語を鑑賞者の記憶に残そうという意図を感じました。
考えることを促すような余韻があるという点で、本作は、原発問題を扱ったフィクションとしての役目を、十分に果たしていたと思います。
良い作品なのにMarkが少ないのは、なんだかちょっともったいないですね。
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