ドント

ゴジラのドントのレビュー・感想・評価

ゴジラ(1984年製作の映画)
3.5
1984年。消息を絶った船で一人生き残っていた青年の目撃した巨大生物。数日後にソ連の原潜を沈めたそれは、1954年に日本を蹂躙した怪獣・ゴジラだった。30年の時を経て甦った王が、米ソ冷戦の狭間にいる日本を再び襲うシリーズ16作目にして1作目の直接の続編。つまり2~15作目はなかったことに。
戦争を知らない世代が過去の戦争の化身であるゴジラと遭遇する話であり、また冷たい戦争の中でゴジラはいかなる存在となりうるのか、その時日本はどうなるのか、そんな思考実験でもある。もちろん、理想論と一部のワンダーは混ざっているが。そういう意味ではシンゴジのお父さんみたいな映画と言えよう。
破壊と残虐の限りを尽くすゴジラと、それを迎え撃たんと構えつつ米ソに「お前らあいつどうすんねん。核使うぞ」と迫られる日本政府のドラマに比して、秘密兵器を作る学者学生新聞記者のパートやソ連のパートが貧弱で冗長ではある。だが遊び抜きの破壊神として原発や首都東京を暴行するゴジラの活躍ぶりは目を見張るばかりで、市民のパニック描写もあいまってやっぱりよう、こうでなくちゃな!と感じさせる。
気に入らないのは、リアルっぽい雰囲気を出そうとしているのに自衛隊の特殊飛行機が「スーパーX」なんて名前であること。金子信雄が「スーパーXゥ??」つったら面白くなってしまうではないか。その閣僚陣には超大御所ではないが重鎮役者たちが揃えてあり、特に首相役の小林正樹はヌヌッ!ムムッ!と顔をしかめるだけで相当の説得力が生まれる。
引っ掛かっちゃう点は多いものの、過去を踏まえつつ時代と社会を巻き込んでゴジラをアップデートせんとした意欲作で嫌いにはなれない。些末なシーンだが、持ち上げられた電車の中にいるかまやつひろしがゴジラの顔を見て畏怖を感じつつ少し嬉しそうな表現をするのが好き。あと武田鉄矢がどう無惨に死ぬかと期待していたのだが、残念だった。
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