ペコリンゴ

バッタ君町に行くのペコリンゴのレビュー・感想・評価

バッタ君町に行く(1941年製作の映画)
3.5
記録。
足元に広がる小さな世界。

かつてディズニーに唯一対抗できたってのも納得の、フライシャースタジオによる今から80年前のアニメーション。

こんな昔の作品の方が最近のアニメよりもヌルヌル、そして生き生きとしてるように感じるのはなんでなんだろう。職人技というのはまさにこういう作品の事を言うのだろう。

タイトルからも明らかなように本作の主人公たちは昆虫。街の片隅で人知れず暮らす彼らが安住の地を求める物語だ。

平和なようでいてどうやら虫の世界にもヴィランはいるようで、主人公のバッタとヒロインの蜂(可愛いんだな)の恋路が気に食わないカブトムシが一匹。この三角関係が事態をややこしいものに変えていく。

やたらとリアルな人間の動きはロトスコープによるものらしく、虫たちのオーバーでダイナミックなモーションとは明確に分離されてるのが面白い。我々の知らない世界である事が強調されてると同時に、そこで起きてる事が意外と俗っぽいのだから。

戦争の時代に突入したことで当時のスタジオは倒産したそうだが、もし現代も存続してアニメを制作していたならば…と考えると寂しい気持ちになりますね。