三畳

バッタ君町に行くの三畳のレビュー・感想・評価

バッタ君町に行く(1941年製作の映画)
4.7
私がアニメを好きな理由がここに詰まっていました
アイデアの品数が多い!500?1000?2000?多分もっと?
たくさんたくさん出し合ったんだろうなってワクワクが溢れてるんですよ

例えば小さな虫たちの暮らしに、人間の産物や廃棄物が生かされたり脅威になったりする。
住んでるお家が歯磨き粉の空き箱を使ってたり、全身鏡サイズのコンパクトの中で眠る自意識過剰の悪玉がいたり、自前の殻にこもるカタツムリもいるし、キャラが反映されてる。

道路のレンガの溝が快適な通り道になってたり、信号の赤と青がサーチライトになってたり、

ポイ捨てタバコで住処にボヤ火事が発生すれば、水を運ぶはずが誤ってすくった一滴のガソリンで全焼しちゃったり。

乾電池の上で何気なく握手するシーンや

ある窓付き封筒が、牢屋にもなるし、郵便屋に拾われる切符でもあり、手紙自体が人間にとって重要事項を告げるものであるという小物の何重使い

そういうアイデアに次ぐアイデア、こうやって書き連ねるのは無粋

お話を進めるためだけの描写っていうのがない。言葉がわからない子どもが見ても(20代女が見ても)、一点だけを見ても面白い。

100分あるお話も想像つかない展開ですごく楽しい。

ハエのスワット、愛おしすぎるよ。敵サイドのおっちょこ子分なんだが、愛嬌とはまさにこのこと…一番好きなキャラだ。独立してシリーズにしてほしいくらい。怒られてるときに相手の鼻を笛にして吹いちゃうメンタル好き

工事現場を数十匹の虫たちがゴール目指してちょこちょこうじゃうじゃ大移動するシーン!
人間の何気ない仕草の一撃の迫力と、虫たちのそれぞれが全身で細かい動きを続けてる対比が、圧巻
手書きのもっちゃりした重みが一生懸命な感じに活きてる


ほんとAmazonプライムで映画見る時って、
他にいいのないからこれでいいか→うーんやっぱりそういう系?(スマホいじいじ)→惰性で最後まで見ちゃう→あ、これ見なくてよかったやつだw 低評価ってほどじゃないけど失われた時間への後悔に★2.5

みたいな最低な(自分が)パターンが多い中、
ガチ傑作、令和元年となっては目を凝らして探さなきゃ一生出会えなかったであろうビデオ(本作もフィルマーク200以下、何で?!)に時々ぶち当たることがあって年会費おつりがくるレベルで。
植草さんの西遊記もそれ。ありがとう!

バッタくん町に行くでググると、日本のアニメーター巨匠たちがこぞって本作をベタ褒めコメントしてるページがあるので見てみるといいです。
http://www.ghibli-museum.jp/batta/comment/

ディズニーのダンボと同じくらいの時期に作られたのかな。こっちもなかなかのドラッギーダンスシーンがある。フライシャー社、歴史のほとんどをディズニーと切磋琢磨張り合ってたらしいが最終的にボコボコに負けてしまったみたいで悲しいな。

この作品のレビューみんなマニアックな方々の考察が読み応えあって嬉しい
三畳

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