サンヨンイチ

美女と野獣のサンヨンイチのレビュー・感想・評価

美女と野獣(1991年製作の映画)
4.0
1991年の作品にして、
序盤からCGや立体感にこだわりを感じます。
アニメーションこそ絵的ですが、
その中で、例えば城がいかに辺境にあるか、だとか
どれだけ長い距離を進んだか、だとか
位置・距離の表現において
時間とお金が要されているように見えます。
城のお皿たちが踊り歌うシーンは圧巻で、
前後の距離感や平衡感覚に狂いなく計算された美しいシーンの数々に出会うことが出来ます。

一方で、
女性像の描き方について批判も受けたという今作は、
差別や女性の在り方について
時代に合わせてシフトチェンジしてきた
ディズニーシリーズの中でも
特に確認しておくべき作品の一つに思われます。

序盤より世論やヴィランの思想として
女性の社会進出への軽視とも思える発言が多く、
女性はかくあるべき、という固定観念が露見します。
戦いに出向く男たちを家の窓からハンカチを振って見送る人たちは
さながら戦時中の様子。
高圧的で男性優位の象徴のような敵役・ガストンが
町の人たちからは決して嫌われ者として扱われる訳ではない、
という点もすごく重要だと思いました。
男性は男らしく前へ、
女性は女性らしく一歩下がって、のような構図が町全体にあり、
今から30年近い前でも拒絶反応を起こすほど
あまり気味の良いシークエンスではありませんでした。

他方、ベルは、抑圧的な社会の風潮に反し、
親を助けるために自ら冒険に進出する自立心や
知らないことを知ろうと興味を持つ探求心があり、
自分の見識を広げていく強さを感じさせる女性となっています。
結局は、ビーストを献身的に支える
前時代的な「理想の女性」の枠に収まってしまい、
ベルもまた批評の的になってしまいましたが
これらのトライアンドエラーで
次の物語へとバトンタッチを繰り返していくのが
ディズニー作品の面白いところでもあります。

こうして一作品ごとに一歩ずつ、
新たな理想を模索し、築きあげていったことによって
「アナと雪の女王」や「モアナ」のような
革新的なディズニープリンセスを描くことが出来たり、
実写版「アラジン」のように
時代に合わせた価値観のアップデートを同作品内で実現した訳です。
まだ、実写版「美女と野獣」を見れていませんが、
前述した疑問点をアップデートし、かつ、
男性女性という枠にすら囚われない幅広い視野を持ち合わせた
作品になっているとして評価されています。

時代に沿ったテーマでアニメ化
→ランドで永劫愛されるアイコン化
→実写版でリブート、その時代にさらに合わせたアップグレード
時代が移り行く中、何十年も愛され続けるのも納得です。


単純にストーリーも面白く、
何度見ても楽しめると思います。