サマセット7

パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たちのサマセット7のレビュー・感想・評価

4.4
監督は「ザ・リング」「ローンレンジャー」のゴア・ヴァビンスキー。
主演は「シザーハンズ」「チャーリーとチョコレート工場」のジョニー・デップ。

[あらすじ]
18世紀のカリブ海沿岸、港湾都市ポート・ロイヤルにて。
海に投げ出されていたところを貴族の娘エリザベス・スワン(キーラ・ナイトレイ)に助けられた少年ウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)は、長じて鍛冶屋の徒弟となり、エリザベスに身分違いの好意を抱いていた。
エリザベスがノリントン提督(ジャック・ダヴェンポート)との望まぬ結婚を迫られる中、海賊の風体をした怪しげな男ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)が現れ…。

[情報]
2003年公開、ウォルトディズニースタジオとジェリーブラッカイマーフィルムズの製作の海賊アクション・ファンタジー映画。

元ネタは、ディズニーランドのアトラクション、「カリブの海賊」である。
カリブの海賊は、1967年にオープンしたアトラクションで、ウォルト・ディズニーが最後に監修したアトラクションの一つ。
ディズニーランドのアトラクションを元ネタとする作品は他に「ホーンテッドマンション」「ジャングルクルーズ」「カントリーベアーズ」などがある。
「YOHO」の歌など、今作の作中には実際のアトラクションを思わせる仕掛けがある。

当時俳優として名声を得ていたものの、メガヒット作には恵まれていなかったジョニー・デップを、一躍トップスターに押し上げた作品として知られる。
彼が演じるジャック・スパロウ船長は、従来のヒーロー像から逸脱した独自のキャラクターで人気を博し、パイレーツオブカリビアンはシリーズ化された。2023年5月現在5作が公開されている。

プロデューサーは、エンタメ志向の強いジェリー・ブラッカイマー。
作中極めて印象的に鳴り響くテーマ曲「彼こそが海賊」は、著名な作曲家ハンス・ジマー(ライオンキングなど)の手による。
しかし、ハンス・ジマーは他の映画の契約上、今作のクレジットに名前を載せることご許されなかったため、共同作業者であるクラウス・バデルトがクレジットされている。

今作は、製作費1億4000万ドルを投じて作られ、見事6億5000万ドルを超えるメガヒットとなった。
今作はシリーズを通して最も評価が高く、批評家、一般層ともに広く支持されている。
ジョニー・デップは、今作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされた。

[見どころ]
1秒1秒が全部楽しい!!
これぞ娯楽活劇!!!
鳴り響くテーマ曲!!!テンションが上がる!!
キャストとキャラクターの魅力!!
ジョニー・デップ演じるジャック・スパロウの、奇妙な動き!!
キーラ・ナイトレイ!!オーランド・ブルーム!!の美男美女!!
ジェフリー・ラッシュのバルボッサ!!!
海賊ものに期待するアクションてんこ盛り!!
狭い足場での剣戟!!
マストとロープを駆使したアクロバティックなアクション!!
大砲!碇!!ボート!!!
ブラックパール号の呪われし船員たちのビジュアル!!
とにかく、記憶に残るシーンが多い!!!

[感想]
何度見ても、楽しいー!!
2時間49分の長尺だが、あっという間!!

やはり、パイレーツオブカリビアンは、一作目こそが至高だ、と再確認した。
このシリーズに期待する要素、すなわち海と船のアクション、キャプテン・バルボッサ率いるブラックパール号の船員たちによる海の亡霊ファンタジー、ジャック・スパロウとウィル・ターナー、エリザベス・スワンの大活躍、鳴り響くテーマ曲、といったものが、すべて今作には詰め込まれている。

そして、変にウェットにしたり、必要以上にシリアスにしたりせず、全編陽気で楽天的なのも、カリブの海賊、という題材と合っていて、印象が良い。

今作で好きなシーンは数多い。
鍛冶屋での、ジャックとウィルの対決!
ブラックパール号に連れ去られたエリザベスが、月明かりの看板に出て、目にする光景!!!
海賊たちの「行進」!!!
などなど。

ストーリーも二転三転する。
特に主人公なはずのジャック・スパロウが、善い奴なのか、クズなのかがはっきりしない、絶妙なバランスに立っているのが、面白い。

流石に、169分は長すぎる気がしないでもないが、今作に限っては、お腹いっぱい味合わせてくれて、ありがたいと思えた。
概ね、港を出るまで、孤島にたどり着くまで、最後まで、の3幕構成で、それぞれにクライマックスがあるため、飽きることはない。

総じて、大好きな一作。
何より、テーマ曲の威力たるや、ミッションインポッシブルに並び、聴くだけでテンションMAXだ。

[テーマ考]
今作は娯楽が最重視された作品で、テーマ性は薄い。
とはいえ、一貫して描かれているのは、「自由」を求める心の素晴らしさ、であろう。
エリザベスの身分社会の女性としての「不自由」。
ウィル・ターナーの、呪われた血筋と、好きな相手との身分差、という「不自由」。
そんな2人の前には、ノリントン提督率いる軍隊と、バルボッサ船長率いる呪われし海賊たちが、「束縛」の象徴として、立ち塞がる。
特に呪いに囚われた海賊たちは、「不自由」の極みである。
繰り返して言及される「海賊の掟」も象徴的だ。
障害を乗り越えて、ウィルとエリザベスは、自己を解放して、真の自由に辿り着けるのか、というのが、今作のメインテーマである。
この意味で、今作の真の主役は、ウィルとエリザベスの2人である。

他方で、キャプテン・ジャック・スパロウは、今作の中で、特に成長しない。
彼は、根っからの海賊であり、終始、自由そのものだ。
彼の破天荒でエキセントリックな言動が、ウィルやエリザベスや他のキャラクターたちに知らず知らず影響して、物語が駆動していく。
彼は、狂言回しで、メンターで、トリックスターなのだ。

[まとめ]
ジョニー・デップをスターに押し上げたメガヒット作にして、海賊アクションの楽しさを極めた、娯楽活劇の快作。

シリーズでは、売り上げ順で1<5<3=4<2。
他方一般的な評価順では、5<4<3<2<1というところか。
すでに4作目までは過去鑑賞済みだが、作品ごとに面白いポイントも異なるため、再度シリーズ通して鑑賞していきたい。