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恋人たちの失われた革命のemilyのレビュー・感想・評価

恋人たちの失われた革命(2005年製作の映画)
4.2
1968年、兵役を拒否し、拒否のサインも拒否し、五月革命真っ只中、機動隊と激しい闘争を繰り広げる20歳の詩人フランソワ。ある日彫刻家のリリーと出会い恋に落ちる。1969年、フランソワと仲間達はアヘンに溺れていき、革命は口で理想を語るだけになっていく。

スタンダード画面で、物語はエピソードに分かれており冒頭から長回し中心の黒い色彩が際立つ中で五月革命の闘争が描かれる。抑揚があまりなく音とクロが見事に交差し、リアルな間を惜しむことなく盛り込み、ドキュメンタリーさながらな描写は静かで永遠に続く。リリーとの出会いまでかなり長時間にわたって黒の中で描かれ、時折何が起こっているのか分からない。しかしその緊迫感はよりリアルで親しみやすい。

リリーとの出会いなら一気に色彩が変わっていく。黒の際立つ中で白の割合が明らかに多くなっていくのだ。特にハイトーンの渦の中に向かっていく彼女の後ろ姿を見つめているガレル演じるフランソワの表情が印象的だ。まだみぬ未来が明るくなる開けるようで、自分自身はそこから出られない囚われの身になってしまう未来を暗示しているようだ。2人が夜の街を歩く。白いシャツを隠すように濃い色彩のジャケットを着ている。革命の最中溢れそうな幸せを隠すように黒が覆いかぶさる。

長回しで見せる表情のアップが印象的だ。よこ顔のガレルには顔の輪郭に影が浮かび上がり、何か考えているようで、何も考えていない空虚な時期を切り取るように、様々な顔のアップが交差する。アヘンに浸かっていく彼ら、革命は語られるだけになり、自らを閉じ込めた空間の中で浮遊感の中で過ごしている。リリーとの恋物語も彼女の現実感がそこから外へ出溢れ出し、三角関係に発展していくと、彼女のジャケットの色彩も黒より淡い灰色になっていく。

五月革命から始まり普遍的なラブストーリーから三角関係へ、お金と現実を選び自らは抜けられない時空の中で、まえに進むことをやめてしまう。夢見た革命は夢見た未来は、やがてその渦に飲み込まれてしまう。開いた鍵の先に続いていく空虚を塗り替える希望を持たず、詩の幻想の世界に身を沈めていくのだ。愛の物語でありながら、しっかり革命の背景がのしかかり、終始聞こえるガレルの細かい息づかいと重なる音楽の効果的な挿入が、危ういバランス感を保ち、抜群の配置と色彩の立体により、その痛みが虚しいまでに痛切に訴えかけてくる。しかし確実に今に繋がり、その荒々しさが瑞々しくしっかり火を灯してくれる。