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ヤンヤン 夏の想い出のhorryのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.0
中盤あたりまで、若干、冗長に感じられたものの、しっかり最後まで見せる作品だった。よかった。

賑やかで騒々しく、少し下品な結婚式のシーンからはじまり、質素で暖かな言葉に包まれた葬式で終わる。
三世代の家族の生と死の一片が描かれているのだが、父の少年~青年期にかけての「青春のやり直し」が、娘と息子の成長にオーバーラップされているのが面白い。

「青春のやり直し」をやり損ねた父は、人生のやり直し、リセットなんてものは起こらないと悟り、それまで向き合うことを避けていた妻と語りあう。
ただし、そのタイミングは祖母(父の義母)の死後だ。
父は祖母の最期を、外出していて看取れなかったことを悔やむのだが、取り返すことは出来ない、そのタイミングで久々に会った妻に語っている。

そもそも、祖母が病に臥せったことがきっかけで、家族はぎこちなくなっており、それが、祖母の死によって、家族それぞれに再生の兆しが現れる。
生と死のつながりは、他にも描かれる。
一度は死にかけた借金まみれの義弟も、ひょんなきっかけで生と生活を取り戻している。一方、ヤンヤンたちの隣人は性に関わる死によって生活を失う。
イッセー尾形演じる日本人が「物事は複雑ではない。とても単純なのだ」と父に告げ、家族の前から姿を消していた妻も同じような言葉を口にする。
生と死のつながり、性を含む人間の生(ヤンヤンも性の入り口に立っている)が、物語の複雑な重なりによって描かれていて、その丁寧さが誠実だな、と感じた。

窓越しの景色の多用や、「白」の使い方(処女性だろう)とかは、きっとたくさんの人が語っているだろうけど、そうしたテクニックも興味深かった。
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