ゆみこ

ヤンヤン 夏の想い出のゆみこのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.4
真実の半分だけを知ることができる?

自分では見ることができないから、と人の後ろ姿ばかりを写真に収めるヤンヤン。
彼の含蓄のある言葉に考えさせられる。ヤンヤンの考え方は幼さゆえの純粋なのか、彼の無邪気な瞳に心臓をぎゅっと掴まれるような心持ちがあった。

そのタイトルとパッケージの写真から、少年の夏休みを爽やかに描いたのほほん青春成長物語かと思いきや全く異なり、例によってこの作品もエドワード・ヤンの他作品でも描かれている”日常に潜む危うさ”を映し出していた。
幸福も不幸も紙一重であり、平和な日常生活なんて氷の上に立つように脆弱であり、同様に人の心も感情も壊れやすいものであるということを光と陰を巧みに操り表現していた。
光彩を、陰影を、希望を、絶望を映像表現に落とし込むことに対してエドワード・ヤンは唯一無二で、彼の右に出るものはいないと改めて感じた。


なんというか、巡らされる思考の量が多すぎて上手くまとめることが難しいけれども、好きなシーン、好きなカットがたくさんあり、お気に入りの映画になった。
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