やま

ヤンヤン 夏の想い出のやまのレビュー・感想・評価

ヤンヤン 夏の想い出(2000年製作の映画)
4.7
もうこんな映画この先出るのだろうかと思えるほど感動した。

今作は、リアル「トゥルーマン・ショー」と言えばいいのか。一つの家族の人生の一部を見ている。そんな感じの映画。

数十年ぶりに昔の彼女と出会う父親。
悩みから宗教?にハマってしまう母親。
隣の部屋の女の子の彼氏を好きになってしまう娘。
昏睡状態の祖母。
そしてヤンヤン。
多くの人物の人生を濃く描いていく今作。

やっぱり自分は人物が色濃く、そして繊細に描かれている映画が好きだと再確認した。どんなクズだろうと、なんだろうと、その人自身が見えてくるとその人の人生にのめり込んでしまう感覚。



ストーリーも素晴らしいのだけど、やはりエドワードヤン監督の映画の素晴らしさは映像。鏡を使った演出が多くみられ、その反射された彼らの姿は直接映し出されるよりも、より悲哀さを感じさせたりする。
そしてあまりにも出来過ぎなロングショットによる素晴らしいシーンもあったりする。

個人的に一番好きだった場面は、父親とシェリー、そして娘と男の子のデートシーンのカットバック。あれほど何かを感じずにはいられない場面はなかなかない。

先日「エドワード・ヤンーー再考/再見」という本を読んだのだが、その本を知って驚いたのは彼の音のテクニック。今作もそれが凄くて凄い。観客の視線をどこに向けさせるか、作り込まれている映像というのをただただ凄いと感じてしまう。

今作を観ると彼の映画がもっと観たいとなるけど、彼は多くの作品を残せていない。
けれども何度見ても新たな発見があるだろうし、新たな感動があるように思える。
素晴らしすぎる大傑作でした。


映画は人生を三倍に味わせてくれるというのはまさにこれ。
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