昭和40年代、高度経済成長に伴う人口増加でニュータウン開発計画が進行する多摩丘陵。かねてより自然豊かな山々で暮らす狸達が、部族による縄張り争いを止めて伝統の技「化学」を駆使して人間たちを驚かそうと企むも、強硬派と穏健派との間で意見が分かれてそうこうしている内に思いもしない展開に発展する様を描いたアニメ映画です。
『魔女の宅急便』と『紅の豚』の大ヒットで立場を確固たるものにしたスタジオジブリの宮崎駿と鈴木敏夫が構想した「狸映画」を高畑勲を監督に据えて制作した1994年公開の作品で、ジブリの高畑作品としては初となる監督原作作品として当初映像化しようとしていた『平家物語』のエッセンスも加えた物語で44億円超の興収を記録しました。
動物が人語を喋るファンタジー劇でありながら時代性のあるテーマを語り、スタジオジブリの代表作となった宮崎監督作品『となりのトトロ』に反する様に日本から失われていくものを問います。それは自然や動物といった表面上のものだけでなく、極めて鮮やかでアニメらしさに富んだ百鬼夜行を通じて、「想像力」だと訴えている一作です。