ちろる

平成狸合戦ぽんぽこのちろるのレビュー・感想・評価

平成狸合戦ぽんぽこ(1994年製作の映画)
3.6
ぽんぽこ、じつは初めから終わりでちゃんと観た事がなかったことに気がつきまして、しっかりと鑑賞。
かわいい狸さんたちがやんのやんのと楽しそうに暴れまくってる印象しかなかったけれど、こうして見ると割と大人向け、いやかなり大人向けなアニメーションなんですね。
狸ってこんなに性欲、じゃなくて繁殖力あるんだとかそういうことこの作品見なきゃ分かんなかったもん笑
多摩ニュータウンの開発をテーマに森林破壊されて居場所を失う狸さんたちの攻防戦を面白おかしく描いていますが、あくまでこれは高畑監督のシニカルな視点。
急激に古き良き日本の叙情的風景が失われていった時代への嘆きのブルースでもあります。
狸の化け作戦はとてもユニークで、中でもお化け屋敷のような幻想的なエンタメシーンは大人になった今でもなんかワクワクする!
狸の死生観も仏教の世界観で表現していく神秘的な表現も高畑美学的で好きでした。

唯一これはもう仕方ないのだけど、狸が第一撃加えて撃退されてしまう人間たちがなんも罪もない現場の人たちという点は解せない。
狸さんたちにそちらの事情なんてわかるわけないのだし、狸さんたちから見ればこれは全面戦争なのだから人間たちが多少死んだり負傷するのは仕方ないのだけれど、こんなドタバタ騒ぎの裏でも開発を決め、懐が厚くなった輩は知らぬ顔で酒を飲んでるんだろうなぁと思うと、なんかモヤモヤが残る。
このモヤモヤの中でなんとなく喧嘩両成敗、もしくは下々が降参する感じにしかならない日本という国のあり方が、この当時から今も変わってないのだと知り切なくもなりました。
多摩ニュータウンにはまだ狸たちが少しいるのかな?
それとも都会の中に人間のふりをしてたくましく生きているのかな?
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