優しいアロエ

オール・アバウト・マイ・マザーの優しいアロエのレビュー・感想・評価

4.0
〈熱く優しい「女性」たちの百花繚乱〉

 主人公マヌエラを中心とした、色とりどりの花束のような作品だ。ペドロドバルの演出する暖色の世界で、「女性」の多様な在り方が提示され、しかし彼女たちに共通する温もりがほとばしる。

 本作には、実にさまざまな「女性」が登場する。ペネロペ・クルスを除いてはどれもゴリラみたいな顔つきだが、それぞれ別個に苦悩を抱えている。それは同性愛者特有のハードな恋愛であり、エイズであり、息子の死であり、ドラッグ中毒であり、妊娠であり、家族との隔絶である。

 そんな「女性」たちは一人ではよろよろだ。しかし、互いに「母性」を放出することで多方向への支え合いを生んでいく。云わば“みんな母親”の歪な擬似家族だ。互いに母となり、子となり、代わる代わる助けあう。

 アルモドバルは、「女性」の人生の克服のカギ、ひいては「女性」の強さを、「母性」に見たのだと思う。注意すべきは、子を産んだから「母親」になるわけではないこと。それぞれ「母親」という役割を“演じる”ことで、自己と他者の救済を同時に達成するのである。

 正直、物語は破綻気味であり、エピソードを一つひとつ掻い摘めばアンバランスなのだが、なぜか総体としては温かな調和を生んでいる。不思議な作品だ。
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[余談]
 本作でアルモドバルはアカデミー外国語作品賞を受賞したが、壇上でそれを嬉しそうに発表するペネロペ・クルスが堪らない。https://youtu.be/Gqk-vogchFk
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