本作「明日に向って撃て!」は原題「Butch Cassidy and the Sundance Kid」と実際に開拓時代末期に暴れまわった二人の強盗犯を主人公にした作品。
改めて説明する必要はないが、ロバート・レッドフォード主催のサンダンス映画祭は、本作の役名が由来であります。
同じくニューシネマの代表的作品に「俺たちに明日はない」があるけど、恐らく「明日に向って撃て!」という邦題はここから拝借したのでしょう。
ちなみにこちらは原題「Bonnie and Clyde」と1930年代に強盗犯カップルを主人公にした作品。
本国でも、あっちがボニーとクライドならばこっちはブッチ・キャシディとサンダンス・キッドだ!と向こうを張って作られたのだろうか。
いずれも過去の時代を題材にし、それを現代(1960年代後半)の感覚で切り取ったという点ではよく似た作品だと思う。
じゃあ雰囲気も似てるかと言うと、どっこい両者の雰囲気は大きく異なる。
特に顕著なのがラストシーンで、史実に基づいて、追っ手に包囲されて最期は蜂の巣にされる展開は両者同じなのだがその描き方が全く違う。
おそらく「俺たちに明日はない」と差別化をはかるためにはどうすればよいのか、作り手たちが考えて考え抜いたのがあのラストシーンなのだと思う。
銀行や列車強盗を繰り返して西部を荒らし回ったブッチとサンダンスだったが、決して殺しは行わず、そして貧しい者からは奪わないというスタンスで、大衆からは好感をもたれていた。
しかし、それを快く思わないのは被害者の鉄道会社で、ブッチたちを消すためについに腕利きの刺客たちを放つ。
この追っ手たちが怖い。「ロード・オブ・ザ・リング」のナズグルを彷彿させる。
劇中、観客には追跡者たちの顔は全く明かされず、彼らは黙々とブッチたちを追跡する。
あの手この手で逃げ延びようとするブッチたちだがすぐに見破られてしまうほどで、ずっと引き込まれて観てしまった。
そして忘れちゃいけないのが音楽。バート・バカラックのスコアがとってもオシャレなのも本作の特徴。
有名な「雨にぬれても」が流れる中、自転車に乗るニューマンとキャサリン・ロスのシーンなんか、時たまYouTubeに70年代から80年代のTVコマーシャルの動画がアップされているけど、あの雰囲気に本当にそっくりだと思う。
■映画 DATA==========================
監督:ジョージ・ロイ・ヒル
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
製作:ジョン・フォアマン
音楽:バート・バカラック
撮影:コンラッド・L・ホール
公開:1969年9月23日(米)/1970年2月7日(日)