半兵衛

不沈のモリー・ブラウンの半兵衛のレビュー・感想・評価

不沈のモリー・ブラウン(1963年製作の映画)
3.8
お金や裕福になることに執着し、大金をつかんで成り上がっていく女性モリー・ブラウンの半生を映画化したドラマ。苛めてくる奴らに対して顔を踏まれたりしても屈しない冒頭や周囲の目を気にせず出世していくその姿はピカレスクっぽいが、そんな悪党とは違いモリー・ブラウンは汚い手は使わない。また彼女は欲しいものを手に入れるパワフルさと周囲の目を気にしない厚顔さを持ち合わせているが同時に内面は優しく、どこか愛嬌があるので温かく見ていられる。

彼女が一から出世していく前半はやや退屈するが、上流階級の仲間入りを果たす後半から面白くなっていく。新参者のため社交界のリーダーである夫人や周囲の人達から無視されるのに対し、モリーは様々な手段で自分の存在を認めさせようとする。四面楚歌状態から人たらし的な手腕で徐々にのしあがっていったり、大盛況のパーティーでのハチャメチャな騒ぎの痛快さは溜飲がさがる。同時に上流社会に馴染めず、故郷に帰ろうとする夫とのすれ違いがドラマに奥行きを加える。主人公をはじめ父親や、ライバルの夫人、ライバルの母でありながらモリーを応援する老女など濃いキャラクターも魅力的。

お客さんが最も見たいであろうモリー・ブラウンの名を一躍有名にしたタイタニックのくだりはあっさりと処理されているものの、そのわずかな描写に彼女の生きざまが集約されているのが粋。
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