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不沈のモリー・ブラウンのFilmomoのレビュー・感想・評価

不沈のモリー・ブラウン(1963年製作の映画)
3.9
①「私は誰にも屈しない」「私は誰の下にもならない」と力強く歌う冒頭のデビー・レイノルズ。ぼさぼさの短い髪、男まさりで、一緒に暮らす兄弟のような子ども達からは馬鹿にされるが、いつもやり返す。そんな暮らしを続けていたデビー=モリーはこの田舎暮らしから出て行く決心をする。洪水によって1人赤ちゃんの時に流されて奇跡的に助かったモリーは、デンバーへ行って伴侶を見つけると、育ての親に謝意を伝えて出て行く。この若きモリーが後に、タイタニック号の生き残りとなるモリー・ブラウンへと成長する。まったく女っけがなく、字も読めないし書けない。場面変わってコロラドの大自然の中で、「コロラドは我が家、この山々がなければ俺もつまらない人間になっていたかもしれない」と歌うジョン・ブラウン、のちのモリーの伴侶となる男が空腹のモリーを家へと誘う。しかしモリーは教養もなく、好意を無にして後さき考えずにジョンの家を飛び出す。デンバーの街で通りがかった酒場で働くことになる。「歌ってピアノが弾けたら雇おう」と言われるが当然ピアノなんて弾けるはずがない。それが適当にやってると簡単な和音を弾けるようになる。「さあ酒場へ行こう」と歌い踊るデビーは、まるでヤケクソのように見えるが、その動きは完璧に計算された動きで、まあとにかく手足を振り回しよく動く。そして後を追いかけてきたジョンに手荷物を渡され、彼の優しさに気付いたモリーは彼から読み書きを習うことにする。やがてジョンはプロポーズする。ジョンの愛を受け止める場面はとてもいい。「私はこの悲惨な暮らしから抜け出すために金持ちと結婚したい!でも私は嘘をつけないの!あなたが好きだから」②ジョンはモリーのためにログハウスを作り家具を揃える。「思い描いていた夢とは違うけど、心がイエスと言っている」モリーはジョンの求愛を受け入れる。②ところがジョンはジョンで、モリーが心変わりする前に結婚式を挙げようと町の人々を家に呼んでいて、そのまま式を挙げてドンチャン騒ぎ。ウエディングドレスも指輪もなし、花婿は酔っ払いという今の状態にモリーは泣きだし、うっかり騙されたと言ってジョンを傷つける。ジョンは家を飛び出すが、3日後になってこっそり大金の30万ドルを持って戻ってくる。モリーのために自分の鉱山を売ったのだ。ところがモリーはその金をこともあろうに、盗まれないようにとストーブの中に隠したものだから、何もしらないジョンが火をくべてしまい、全て灰になってしまう。(当時の観客がスクリーンを観ながら「OH!NO!」と叫ぶのが目に浮かぶ)③ここからがまたドラマチックな波乱万丈の人生が始まるわけだが、とにかくモリーのマンガのような性格と底抜けのジョンの優しさが、幸運に招かれて展開していく。上流社会の仲間入りをしようとしてつまはじきにされる場面は悲しいものがある。しかしモリーはいじけないし、くじけない。上流社会の人間たちも、モリーもアメリカ人の側面。憧れていた世界に一度は落胆はするが、神父にヨーロッパの社交界で教養と品位を身につけてくれば彼等を見返せると聞いてモリーは大いにモチベーションを上げる。この前向きな力はすごい。多少の(いや大いに)脚色はされていると思うが、実際のモリー・ブラウンも少なからずそういう人物だったのだろう。終盤は上流社会の人々との対立と、タイタニック号に乗船するまでのいきさつとその後が語られるが、「不沈の」という言葉にモリー・ブラウンの人生のすべてが含まれている。
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