薔薇

台風クラブの薔薇のレビュー・感想・評価

台風クラブ(1985年製作の映画)
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題材としては『ブレックファストクラブ』に似た群像劇。閉鎖感溢れる田舎の中学校に台風と共にやってくる奇妙な青春の一瞬。

“青春”の陰の部分を描いた作品。鬱屈とした将来の不安、どうしようもない大人への反骨心や疑心、青春というステータスの喪失。

そんな陰は台風のひと時だけ彼らの中から消えていく。台風の中踊るシーンは必見。激しい台風に伴い青春の異常性の部分が爆発する素晴らしいシーン。漠然とした不安に対する心理をそのまんま映像として見せつけられた。

ラスト、台風と共に去っていく異常性。そして悟る三上。大人になるための心理的な壁に先にぶつかった彼が起こす行動は他の皆んなの通過儀礼になったのかどうか。青春の終わりの漠然とした不安に対する彼の回答。

三上が青春の不安を言葉に表した「死は生に先行する、厳粛に生きる」。それに1番近い感覚を持った作品は間違いなくデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督の『イット・フォローズ』セットで見ると面白いかもしれない。というか『台風クラブ』をホラーに編集した映画にしか見えなくなってきた。

青春を扱った群像劇の中でも傑作だと思う。あくまでもフィクションとして陰の部分をここまで真っ当に描いた映画は初めて見た。これを基にした作品は数多にありそう。
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