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台風クラブのTSのレビュー・感想・評価

台風クラブ(1985年製作の映画)
3.5
【大人への不満と疑問】75点
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監督:相米慎二
製作国:日本
ジャンル:恋愛・ドラマ
収録時間:115分
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現在公開したら教育上様々な問題が出てきそうな今作。台風により施錠された学校内で生徒が暴れるというお話です。思春期の生徒の心を上手く描いている作品だと思います。また、三浦友和演じる梅宮先生の駄目っぷりには考えさせられてしまいます。

ある地方の中学校。数学を担当する梅宮の授業時に、梅宮の恋人の親が乱入し、彼に早く娘と結婚するように迫る。翌日、台風が接近してくるのだが。。

昔ながらの学校、教育方法が描かれていて40代くらいの方が見たらどこかノスタルジーを感じられるかもしれません。体罰厳禁の昨今ですが、この頃は関係ない。梅宮先生は見境なく生徒をバシバシ叩きます。今が敏感すぎるのでしょうか?しかし、この当時の目線から見ても梅宮先生が理想の先生であるとは言い難いでしょう。恋愛関係を学校内に持ち出されるし、泥酔して生徒の意見を蔑ろにするし、見習うべきところはほとんどないと言っても良いかもしれません。無論、生徒達もそれを感じ取っていて、先生、転じて大人に対して不満や疑問を抱くようになります。生徒側の中心とも言える三上の表情が静かにそれを示しています。

さて、翌日に台風が来るのですがそこからが中々カオスで面白い。今ではあり得ないですが、台風のために学校が完全に施錠され、残された生徒は帰れなくなるのです。思春期ということもあり、様々な欲求が行き交います。清水が大町を襲うシークエンスなんて最早ホラーですし、ラストの体育館と思しき箇所での踊りも不気味です。しかし興味深いことに、今でも昔でも子どもからすると、やはり台風はイベントのようなものなのです。大人になればその被害などを鑑みて、深刻に考えるべきなのですが、子どもからすると自分の家が全壊しない限り知ったことではない。むしろいつもと違う、それこそ学校が休みになるなどという非日常を味わえるため、子どもにとって台風はイベントそのものなのです。
台風は無論自然災害なので、真剣に対処しなければならないものですが、今作においては台風の恐ろしさは全く描かれていません。むしろ、剥き出しになった人間の恐ろしい本能を描いています。そのあたり、非常に面白いなと感じました。

それにしても大学生が中学生をナンパするなよ!とツッこんでしまいましたね(笑)
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