つぼかび

台風クラブのつぼかびのレビュー・感想・評価

台風クラブ(1985年製作の映画)
4.6
ずしりと胸にくる作品。

やや発達障害ぽくて脇役の明君がもっともある意味もっとも達観した眼差しを持っている。明君のプールからの蘇生が物語の始まりならば、三上も犬神家から蘇生している方が物語の終わりとしては自然か?(明君の背が伸びたことに三上の背伸びが投影されているのかもしれないが)

ずっと解消されることなく沸々と燻り続ける中学生の情動は、閉じた空間の中で内破し続ける(教室、部室、学校)。窓や扉を開けたり閉めたりするシーンが際立つように、彼ら彼女らはその気になれば外に逃走し続けることも出来るのに、閉じた空間に留まり続ける/もしくは戻ってくる。ただいま/おかえりの自己完結した反復のループは内破し続ける永久機関。ループから抜け出す/もしくは忘却する手段になりそうな酒やセックスが描かれず、よりループに閉じこもる煙草と生と死への関心が強調される。確かに台風は彼らの情動の暴発の象徴だが、印象的なのはむしろ台風の後も残り続ける水溜まりである。

梅宮先生の姿と電話での台詞は実に現実的で、いつか中学生たちもそうなることを受け入れるのか、絶望してゴーストワールド行きのバスに乗ってしまうのか、それ以外の生き方を見つけるのか、それは全く分からない。
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