Kumonohate

悪名市場のKumonohateのレビュー・感想・評価

悪名市場(1963年製作の映画)
3.9
シリーズ第6作。またも四国が舞台。今度は悪名コンビ(勝新太郎・田宮二郎)の偽物(芦屋雁之助、芦屋小雁)騒動。ストーリーはシンプルだが、実は小者な偽物コンビが物語の良いスパイスになっている。そして、真打ちの悪党が極めつけに憎たらしいので、それを懲らしめるべく登場する朝吉が矢鱈とカッコイイ。何よりクライマックスが爽快。面白い。

そして瑳峨三智子。

これまで私は彼女のことを、やれクセになるだのやれ中毒性が高いだのと評してきたが、本作にて遂に目出度く感染した。妖艶なんだか怖いんだか美しいんだか可愛らしいんだかお茶目なんだか分からないこの魔女にすっかりハマってしまった。見る者の心にスッと入り込み感情を支配する恐るべきその妖術は、我々の目をして彼女の表情に自分の感情を投影せしめてしまう。その結果、我々は、或る時は物凄く妖艶に、或る時は物凄く怖ろしく、或る時は物凄く美しく、或る時は物凄く可愛らしく、或る時は物凄くお茶目な女性として、彼女を見てしまう(但し本作では、妖艶バージョンと怖ろしバージョンは出て来ない)。では何故、我々はいとも簡単に術にかかってしまうのか。高い演技力がその源であることは間違い無いが、加えて、彼女の甘ったるい声質が大きく作用していると私は睨んでいる。あの目に入ると気になってしょうが無い個性的な唇から発せられる音には、強い呪術効果があるに違いないのである。

髪を短くして赤く染め、ワンピを着たり着物に着替えたりして、勝新太郎と丁々発止の会話を展開させる瑳峨三智子に、目と耳が釘付けの一作。
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