次男

奇跡のシンフォニーの次男のレビュー・感想・評価

奇跡のシンフォニー(2007年製作の映画)
3.5
僕は天才の映画が好きだ。
なのは間違いないはずなのだけど、この天才の映画はあまりハマらなかった。なんでかなーと考えていたら、天才映画のなにが好きか、すこし整理できてきた。この映画の天才は、「僕が天才にはやってほしいこと」をあまりやってくれなかった。

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・天才が凡人と影響を与え合う。
天才が天才を発揮しただけで、凡人の人生を動かしたりしなかったし、凡人の人生と影響し合わなかった。ただただ、天才の御業を披露して賞賛を浴びてただけだった。それはそれで好きなんだけども。このドラマのどこかに乗っかりたかった凡人僕には、「あっそふーん」って感じになってしまった。

・天才が悩む。
僕の好きな天才映画の天才たちは、悩んでた。ある分野では異様に秀でても、他の部分は凡人かそれ以下で、なのに抱えたギフトのせいで悩みは重く、そんな彼らの、涙とか葛藤とか選択に、僕は感動した。
この映画の彼は、悩み知らずだ。ずーっとまっすぐだ。僕にはそれが面白くなかった。

・天才が天賦の才でみんなをハッピーにする。
「音楽は人を繋ぐもの」なのに、結局彼が繋いだのは、自分の身内だけだった。施設で彼を妬んでた子たちは?下のベッドに寝て「音楽なんて聴こえない!」って言った子は?朽ち果てた劇場で音楽を楽しんでた彼らは?主人公の天才性に居場所を奪われた黒人の男の子は?音楽を商売に変えてしまった、きっと闇落ちしたであろう彼は?不遇な凡人たちには、結局なにも訪れないの?僕は親子の邂逅なんかよりも、そっちをずっと待ってたよ。大演奏が終わって、もしくは絶頂の中で、不遇で凡人な誰も彼もが手を取って、天才の音楽ですこし幸せになる、そんな瞬間を待っていた。


…などと言うのは僕の勝手な要望であることは重々わかっているけれど。

お話がうまく転がることも、天才とはいえ楽器演奏をすぐ習得することも楽譜を書けてしまうこともとやかく言わないけど、僕の求める天才にはやってほしいことがあった、というのがわかりました。

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いろいろ考えたけど、これ結局作り方がラブロマンスに近いんかも。親子の愛とかでもなければヒューマンドラマでもなく、ラブロマンス。だからこれでいいんだなあ。たぶん。

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音楽はとても素敵でした。
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