ひでやん

クレイマー、クレイマーのひでやんのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.0
妻に突然出て行かれた夫が、育児と仕事の両立に奮闘するホームドラマで、当時のアメリカの離婚問題、親権争いを正面から描いた作品。
 
「ママはどうしていなくなったの?僕が悪い子だったから?」

子供に罪はないんだから、そんな事言われるとたまんない。母を恋しい息子に手を焼きながら、悪戦苦闘のドタバタ父ちゃん。自転車に乗れた息子に喜び、怪我をすれば病院まで抱えて走り、言うことを聞かなければ叱り、眠りにつけば布団をかける不器用な育児初心者。そんな父子の日常に焦点が当てられるので、子供を置き去りにした母親が身勝手に思えた。

しかし、親権裁判で母親が口を開けば、仕事一筋で家庭を顧みなかった夫が悪いという気持ちになる。妻の話に耳を傾けていれば、心が氷点に達する事はなかったかもしれない。夫婦というジェンガも、バランスを崩せば取り返しがつかない。母子に焦点を当てると、仕事人間の夫が悪く見える。

弁護士が詰め寄ると母が悪く思え、母が涙すると味方し、逆に責められると今度は父を応援…。もっと言ってやれ!いや、言い過ぎだ!そんなふうに感情が揺れ動く裁判で、どちらが勝っても喜べない争いだった。複雑な表情を浮かべるダスティン・ホフマンとメリル・ストリープの演技に引き込まれた。そして涙腺を緩ませた子役は名演技。

不慣れなフレンチトーストで始まり、慣れた共同作業のフレンチトーストで終わる。それが親子の成長になっている事にホッコリ。
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