おーたむ

クレイマー、クレイマーのおーたむのレビュー・感想・評価

クレイマー、クレイマー(1979年製作の映画)
4.8
アカデミー賞の時期だったので、アカデミー賞の受賞作品をと鑑賞。
賞を総なめしたのも納得の傑作でした。
てゆーか、前に草なぎ剛主演でそっくりのドラマがあったけど、あれはリメイクなんですかね? もしやパクり?
まあ、それはどうでもいいんですけど。

突然妻から別れを告げられた男が、父子二人となった家庭で、残された息子とより良い関係を築いていく…んだけれど、後に、息子への愛情に気づいた妻と、息子の親権を争う、みたいな話。
当時の社会的問題を扱いつつ、父子のドラマに加えて、法廷劇も見せられるという、一粒で三度おいしい、この題材の選び方が、まず良かったと思います。
ツボを押さえたテンポのよい演出も、父子への感情移入を促すと同時に、作品にも没入させてくれて、巧みでした。
演者も素晴らしく、悲しみや喜びを大袈裟な感情表現ではなく、細かいニュアンスで表現してみせたダスティン・ホフマンは、さすがの演技巧者ぶり。
幼いなりに大人の事情を受け入れようとするビリー役のジャスティン・ヘンリー、自立心と息子への愛情の間で苦悩するジョアンナ役のメリル・ストリープら、各助演も、作品にリアリティを与える好パフォーマンスだったと思います。
見ごたえありました。

しかし、本作を見ていると、幸せな出来事だけが人生を豊かにするわけではないんだ、ということを思わされますね。
仮に妻が、不満を抱えながらも家族を維持することを選んでいたら、父と息子がこれほど深い絆を築き上げることは、おそらくなかったはずですから。
あの時あれだけ不幸だと感じていたことが、今の幸せのきっかけになっているなんて、人生は不思議なものです。
そしてだからこそ、不幸な現実の中にあっても、その先にあるかもしれない幸せを目指して、懸命に日々を生きなければいけないんだよな、などと思ったりも。

単に出来のいいドラマというだけではなく、人生における大事なことに気づかせてくれる作品でした。
あらためて、傑作です。
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