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カラー・オブ・ハートのtsのレビュー・感想・評価

カラー・オブ・ハート(1998年製作の映画)
3.6
新しい作品ではないのに色褪せない、いまでもメッセージがわかりやすい、いい映画だった。ストーリーはシンプルで、画一的な没個性からの脱却をシンプルに描いていた。

面白かったのは兄であるデイヴィッドは道徳的、倫理的な観点から、プレザントヴィルの住人たちに自我の開花を促す一方で、妹のジェニファーは快楽的な観点から、もっと根源的な自由の意味、悦びへの目覚めを促すところ。そんな対比も冒頭からしっかり組まれたキャラクタ設定で違和感なく楽しむことができた。

ちなみに、デイヴィッドがダイナーの店主であるビルに、彼が興味を持つ絵の素晴らしさを伝えるため、世界の名作絵画集を見せるシーン。見切れてしまっていたけれど、一番最初にあらわれるのはルネサンスの画家、マサッチオの「楽園追放」で、禁断の果実を口にし、恥を知覚するようになったアダムとイブが天使に楽園を追われる様子を描いた一枚。まさにこの作品のコンセプトをすごく象徴的に表していて、犯罪も火事も起きない、不倫もない、性の悦びもない、外の世界(や他者)に対する関心もない、そんな物事がすべてシナリオどおりに動き、精神的な多様性も存在しない世界の住人が、デイヴィッドとジェニファーがもたらす禁断の果実に触れ、モノクロだった世界が陰影含めて色彩豊かな世界へと変わっていく。自由思想主義的なメッセージが多分に含まれている作品に感じた。

面白かった!
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