滝和也

明治天皇と日露大戦争の滝和也のレビュー・感想・評価

明治天皇と日露大戦争(1957年製作の映画)
3.6
難攻不落の旅順大要塞!
迫るバルチック艦隊!

明治大帝のご威光の基
落とすか、乃木大将率いる
皇国陸軍!
破るか、東郷司令官率いる
連合艦隊!

興国の存亡この一戦にあり!

「明治天皇と日露大戦争」

戦後、僅か12年で新東宝にて作成された空前絶後の戦争映画です。何が空前絶後かと言えば、その理由として、戦前、戦中派の方の心を掴み大ヒットした点、そしてヒットの要因となった当時のタブーを破った点…。

天皇陛下が主役であること

演じるは嵐寛十郎、アラカン先生です!
不敬罪になるまいか、僅か10年前まで現人神であった陛下を演じる等も恐れ多い訳です。また誰も明治天皇を知る訳も無い。その中、アラカンは葛藤しながら、見事、明治天皇を演じました。直立不動、感情を極力抑えながらも、国民を思う気持ちが前に出た天皇像を作り上げています。心痛如何ばかりかと思わせる演技、これは後の役者への影響も与えていますね。また台詞まわし、立ち姿、威風堂々の貫禄と共に素晴らしく、思わず頭を下げてしまいます…。

以降に作られた東宝作品と違い、メロドラマ的な要素がなく、大本営と陛下の御心を表すシークエンスと壮絶なる戦闘を交互に描き、スピーディーかつスペクタクルな展開がヒットした要因です。多分に美しい国日本と言うか、太平洋戦争前の日本人を蘇らせた作品であり、戦意高揚作品であるかの様なものの、戦争映画としてのスペクタクルの面白さ、また戦争の悲惨さ、痛ましさを描き出しています。

中盤の旅順大要塞攻略戦、二百三高地の戦いで、露軍ガトリング砲掃射による屍が累々となるシーンは、その悲惨さの極みです。大人数での戦闘シーンは迫力がありますし、銃剣のみで突撃する日本兵、その中に乃木将軍の息子役で若き高島忠夫、士官役でサーベルを振るう若山富三郎がいます。

そしてラストは日本海大海戦。海戦史の中でも未曾有の大勝利であるバルチック艦隊との死闘を描きます。連合艦隊司令長官東郷平八郎に田崎潤!後の海底軍艦艦長ですね。軍艦マーチで出陣し、敵艦隊眼前での「展開!」の命令による豪胆過ぎる東郷ターンと呼ばれた作戦をもって、敵艦隊を撃滅します!その豪胆さを表すにはもってこいの役者さんですね。また副官役には若き丹波哲郎ですからね(^^) 特撮シーンもかなり頑張ってますので満足できますよ。

確かに空前の大ヒットをした理由も分かりますね、日本人の誇りを戦後思い出させてくれる作品であり、進駐軍からも開放され自由に表現ができる様になった象徴的な作品でもありますから。また戦争映画として後の連合艦隊、二百三高地等の東宝作品群に大きな影響を与えたのも事実でしょう。また宇宙戦艦ヤマトファンにも刺さるかな(笑)私がそうですからね(^^) もし見る機会があれば、是非。

追記 乃木将軍の副官はウルトラセブンのキリヤマ隊長です(^^) 特撮ファンには堪らないですね(^^)
滝和也

滝和也