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他人の顔の一のレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
3.8
勅使河原宏監督作品

『砂の女』に続き、安部公房の原作・脚本

事故によって顔面に醜い火傷を負い「顔」を失った男が、精巧な「仮面」を作成し、自己回復のため妻を誘惑しようとする物語

芸術色の強い『砂の女』とは打って変わってシンプルにめちゃくちゃ楽しめた
とはいえ前衛的な映像や音楽は健在で、スタイリッシュな演出も隅々に散りばめられており、訳のわからないアバンギャルド全開なオープニングからぐいぐいと引き込まれ、サスペンスフルな展開を最後まで突き進む物語の独創性に圧倒され続ける

診察室は全く別世界のような雰囲気を醸し出すほど異様な光景だったし、恐ろしくシュールなラストシーンも鳥肌が立つほど素晴らしい

誰しも他人の前では被ってるであろう様々な「仮面」
「顔」というアイデンティティを失った時、そして内に秘められた劣等感は「顔」を変えたくらいではどうにもならない
それらの本質を知的障害を持つ子に見抜かれているあたりもめちゃくちゃ巧い

意外にもセリフが多めなのは気になりましたが、キャストの皆さんも抜群に巧かったし、人間の本質を捉えた深層心理を見事に映像に落とし込んだ非常に見応えのある不条理劇だった
原作も気になるけど難しいんだろうなぁ

〈 Rotten Tomatoes 🍅※100% 🍿91% 〉
〈 IMDb 8.0 / Metascore - / Letterboxd 4.1 〉

2021 自宅鑑賞 No.279
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