イチロヲ

他人の顔のイチロヲのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
3.8
事故により顔面がケロイド化してしまった男が、人工皮膚の仮面を被った生活を送ることにより、一種の解離症状を表出させてしまう。1964年度「砂の女」と同じく、安部公房原作・脚色、勅使河原宏監督により製作された作品。

原作小説は主人公の一人称による心情吐露に一貫しているが、本作では映画的な演出を加えての対話劇に改変させている。主人公の心情を台詞で喋らせずに、行動や対話の言葉使いで鑑賞者に解釈を委ねる。このスタイルは主観から客観への正しいコンバート法だと思う。

「自己の喪失、自己の確立」をひたすら問答していく観念的な内容なので、人を選ぶ作品ではあるけれど、本作で語られていることは「ゴーン・ガール」でも描写されていたような普遍的なものに過ぎない。要するに「人間は常に何かを演じながら(仮面を被りながら)生活している」ということ。「恋人同士は相手に好かれるための恋人を演じているし、会社員は会社に従順な社員を演じている」

全編に漂っている前衛的かつ悪夢的ムードも単純に楽しい。とくに、整形外科医の院内がトランス映像のようで最高すぎる。