やま

他人の顔のやまのレビュー・感想・評価

他人の顔(1966年製作の映画)
4.6
ここ1ヶ月ずっと自分にとって観たことないような映画を求めてたんだけど、やっと出会えたって感じ。

安部公房と勅使河原監督の映画がやっと観れた。以前彼の小説を読んで受けた衝撃を映画でも味わえた。

オープニングから分かるいい意味での気持ちの悪い映画。人間の悪い所とでも言うべきか人間の深層心理を突いたような映画。

他人の顔になり妻を誘う、妻の心を弄ぶような話なのだが、なんて言えばいいのか分からないけど、とにかく陰鬱とした雰囲気が永遠に漂ってる。前半は顔が大火傷でただれていて常に顔中に包帯を巻き、人に屁理屈というか嫌味のある話し方をする主人公。後半新しい顔を手に入れた主人公の変わりよう、そして絶望。

物語自体も最悪なのだが、それを表現する映像がまた凄い。医務室は謎の空間であり、場面によっては、不自然なものが写り込んでる。カメラワークは決して激しくなく、また不自然なのだけどそれしかない角度から映し出していたりなど、この感じは自分の好みだった。やっぱり面白い映画は鏡の使い方も面白い。

今見ても新しいと思える映画こそ秀作なんだなと思える一作。最近はこういう実験的ともいえる映画が日本にはないように思える。ましてや東宝が配給することなんて当分ないのだろうな。もっと日本国民が映画好きになればいいのに。
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