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病院坂の首縊りの家のdaiyuukiのレビュー・感想・評価

病院坂の首縊りの家(1979年製作の映画)
4.3
昭和二十六年、渡米を控えた金田一耕肋(石坂浩二)は久しぶりに昔馴染の老推理作家(横溝正史)を訪ねると、パスポート用の写真屋を紹介される。
本條写真館を訪ねた金田一は、そこで、経営者の徳兵衛(小沢栄太郎)から、最近、誰かに狙らわれているようなので、調べて欲しいとの調査依頼を受ける。
その夕、ある少女が結婚写真の撮影依頼に来た。
徳兵衛の息子、直吉(清水紘治)が撮影に案内された所は、何と、首縊りの家と呼ばれる明治から終戦直前まで繁栄した法眼病院跡だった。
終戦の翌年に山内冬子(萩尾みどり)という女性がこの家で縊死したのがその名の由来である。
直吉はそこで、依頼に来た少女と瓜二つの花嫁とある男の写真を撮った。
翌晩、また写真を撮って欲しいと同じ少女の声で電話が入り、本條父子、弟子の黙太郎(草刈正雄)、金田一が撮影現場に行くと、天井から花婿になった男の生首が縊られていた。
そして、黙太郎が暗がりから逃げようとしたジャズ・コンボのギタリスト・吉沢平次を捕えた。
現像された写真を見た徳兵衛は、花嫁が法眼家の娘・由香利(桜田淳子)と酷似しているのに驚く。
「生首風鈴殺人事件」捜査本部が設置され、等々力警部は家主、法眼弥生(佐久間良子)、由香利、五十嵐滋、田辺光枝(三条美紀)、死体発見者の四人、容疑者の吉沢を集めた。
吉沢は花婿、花嫁は血のつながりのない山内敏男(あおい輝彦)、小雪(桜田淳子)兄妹で、街はづれの空きガレージに往んでいると証言した。
やがて金田一は、敏男と小雪が終戦直後に縊死した冬子の遺児であることをつきとめた。捜査本部へ小雪から遺書が届いた。
「血のつながりのない兄との結婚を断ったことから争ううち、兄を刺してしまい、息絶える寸前、母を不幸な死に追い込んだ法眼家への復讐の念を燃やす兄は、自分の首を母が死んだ場所に吊るすことを遺言した。私はそれを実行し、母、兄の許に旅立つ……」といった内容だった。
だが、金田一の推理通りその遺書から小雪の指紋は発見されなかった。
数日後、徳兵衛が殺された。続いて、吉沢も殺された。
金田一は黙太郎の協力で、法眼、五十嵐一族の複雑な系譜と恐怖の事実を発見した。
横溝正史のミステリー小説を映画化した、市川崑監督と石坂浩二のコンビによる金田一耕助シリーズ最終作。
法眼病院を経営する法眼家に渦巻く愛憎劇と生首風鈴事件に端を発する殺人事件を金田一耕助が解いていく展開を、近親同士の愛憎劇、欲望のために踏みにじられた女性たちの哀しみを絡めて描いているので切ない後味ですが、金田一耕助と若々しく好奇心旺盛な黙太郎との相棒関係がユーモラスな味付けをしています。
金田一耕助が珍しく自分の生い立ちについて黙太郎に語ったり、金田一が犯人の動機に繋がる証拠を隠滅したり、他の作品ではあまり見られない金田一耕助の人間性が見られるのも興味深いです。
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