カテリーナ

オアシスのカテリーナのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.5
脳性麻痺の女性コンジュと前科者のジョンドゥの純愛を描いた
コンジュを熱演した
ムン・ソリは鮮烈な印象を残す
もはや、演技では無い!テレビの映像で
脳性麻痺の方を見たことがあったが、
この人は本当にこの病気にかかってるのかと思わされるほど!
凄い!

本で読んだ事だが、ムン・ソリは演技中にあまりの熱演のため呼吸困難になり、何度も救急車で病院へ運ばれたらしい
凄まじい女優魂である

イ・チャンドン監督は
人間の複雑な感情を炙りだす演出が秀逸
説明台詞などは皆無なのに人物描写や
行動などから滲み出てくる

若干行動が子供じみて精神年齢が低いと感じる
ジョンドゥを演じるソル・ギョングと
脳性麻痺のコンジュは世間から置いてきぼりになっている
それ故に容姿とは裏腹な心の純粋さが際立つ コンジュが兄夫婦に古いアパートに置き去りにされた後、鏡に反射する光を見て遊ぶ場面では天井に映される割れた鏡の破片が
少しずつ形を変えて蝶になり静かに羽ばたく ハッとさせられるが胸が締め付けられるのと同時に
癒されもする 複雑な思いに駆られるのだ

本国では身体障害者に対して露骨に
家族の恥だと家に閉じ込めて社会から
隔離する風潮があるとも本に記載されている コンジュがあまり兄夫婦から外に出して貰えなかったこどが窺える場面だった
そしてそれを受け入れた上で
与えられもので満足し、割れた鏡で遊ぶ
コンジュが不憫であった
そしてジョンドゥはそんな美しい心のコンジュを初めて見た時から惹かれたのだ

純粋過ぎるふたりは
それ故に傷つき、世間から、まして家族からも冷ややかな目で見られる
ジョンドゥの母親の還暦祝いの席では
あからさまな迷惑顔に観客はいたたまれない想いになる

時々コンジュが普通の女性になり
話したりする場面が散りばめられている
コンジュのジョンドゥへの愛情
健常者への憧れなどが表現される

私が健常者ならこんな風にジョンドゥを
慰めたり、おしゃべりしてみたい
と、言ってるようだ
監督のイ・チャンドンは今作が初めてだが、何処までも優しい目線で人間を見つめる姿勢が良い
ただ、容赦無い障害者への偏見を叩きつけてくる
もっと、障害者に耳を傾けよと訴えてくる

それにしても鑑賞してから数日たった今でも私の心の中にコンジュとジョンドゥが
確かに息づいている
まるで親友のように
映画の中のふたりが今でも生きているのだ
それは
余りにも強烈な印象を私に植え付けた
証拠なのである
カテリーナ

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