ヒロオさん

オアシスのヒロオさんのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.0
発達障害をもつ前科者の男性と、脳性麻痺を抱える女性のラブストーリー。

衝撃作。

何が衝撃って、第一に、これほどまで真っ向から障害者を描く作品があることに驚いた。
障害者のラブストーリーというのを美化し、感動ポルノ的な作品になってはないかと懸念していたが、むしろフラットな描き方をしていた。色んな感情が湧き上がってきて、筆舌に尽くし難い余韻が残る作品だった。

第二に、自分が障害者に対して向けるまなざしについて、これほどまで自覚させられる映画があることが衝撃だった。
自分でも認めたくないことだが、正直なところ、生々しく映し出される脳性麻痺患者の見た目に対して戸惑いや忌避感のような感情を抱いてしまった。
じゃあ自分がその立場だったらと思うと、この視線は本当に辛いものだし、ましてやそれにより差別的待遇を受けたら悔しい。
誰かをそう感じさせる感情を自分が潜在的に持っていることに戸惑った。

本作では、障害者と健常者の双方の立場も垣間見ることができる。

主人公2人の視点に立つと、周囲の人から煙たがられたり、1人の人間として尊重されなかったり、理解されなかったりするのを追体験することができる。
そして、障害があるが故に自力ではどうしても乗り越えられない壁があることにもどかしさを感じる。

一方で、周囲の人の視点に立てば、周囲の人達ちょっと酷いなとも思えなくなる。
それぞれが自分の生活で精一杯の中、障害を持つ家族のためにやれることはしている。
聖人じゃないんだし、足ばかり引っ張ってこられてもなお面倒を見続けなくてはいけないことにうんざりする気持ちもよくわかる。
障害者と健常者の共生は、こうだと割り切ることのできない複雑なテーマだと感じる。

そして、女優の演技のリアルさには本当に驚いた。
途中まで、実際に脳性麻痺の女優を起用したものだと思っていた。伝説級。
ヒロオさん

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