バルバワ

オアシスのバルバワのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.5
『バーニング』を観て改めてイ・チャンドン監督作に触れたくなり今作を鑑賞致します。

いやぁ、ブッ飛ばされました…。

あらすじはムショ帰りで社会に打ち解けることができない青年ジョンドゥが難病を患っているコンジュに出会い、逢瀬を重ね恋に落ちていく…的な感じです。

あらすじだけ読むと素敵な純愛ストーリーで周りに粋で優しい協力者、理解者が出てくるストーリーを想像してしまいますでしょう!監督がイ・チャンドンだと知らなかったら私はそんな話だと思いますよ…しかし!


まったく違う!!!この世はそんなキラキラした綺麗な物でできてないし、汚く悪々しくもできていないということも教えてくれます!


要はこの世は分かりにくいということです。

この主人公とヒロイン、設定だけ取ってみればはいくらでも漂白し美化できるキャラクター造形なのですが…イ・チャンドンは甘くない!
まず主人公のジョンドウ。彼は悪い意味で社会の規範から逸脱しておりヒロインのコンジュを一度襲おうとしているような決して善人とは言えない人物(恐らく軽度の発達障害があると思いました)です。
ヒロインのコンジュは脳性麻痺なのです。彼女自身は聡明な女性なのですが…演技が迫真過ぎて、語弊を恐れず申し上げると観ていて辛くなりました(障害を持った役柄を演じることへの批評は『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』でも言及されてたことを思い出したり)。


また愛想の良い新婚夫婦や一家を支えている爽やか兄さんや警察のモラルが低かったり裏で卑劣なことをしてたりします。

そんな世渡りだけ上手い糞野郎か差別的な糞野郎だらけな感じなので基本的に鑑賞中は陰鬱な気分になってました。特にコンジュの来店を糞みたいな理由で断った焼き肉屋の糞店員に対しての殺意がヤバかったです。

鑑賞中唯一心地良かったのはジョンドウとコンジュのデートシーンですね。孤独で寄辺のない魂同士が人生を謳歌している姿は涙が出ました。

また、映画やドラマ等で障害のある人物を描くと並み外れた純粋さを兼ね備えていたりしてある種神のような存在として描かれていることがあり殊更"フィクション"であることを意識してしまうのですが、今作はコンジュを時には怒るしワガママも言うし性欲もある1人の人間として描いています、障害というものに対して真摯に向き合っているように思えて非常に好感を抱きました。

私自身障害を持つ方に対して色眼鏡をかけて見ていたりある種の畏怖を感じていたことを認識させられました。そして、その畏怖は私の差別意識や無知によるものだと思え、この映画に「一度向き合ってみろ」と言われているようでした。


観る方によれば不快に思ったり露悪的にすら感じてしまうような迫真の演技に加えこの世に私達の心に確実に存在する醜く、卑しい悪意を描いているので万人にはオススメはできる作品ではありません。しかし、孤独な魂を救う魂が決して清廉潔白である必要はない誰だって救うことが出来ると教えてくれた私にとっては大切な一本になりました。