まりぃくりすてぃ

オアシスのまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.7
終わったあと茫然。後半めちゃめちゃスクリーンに入り込んでたから。
“君のオアシス”を守る、最後の捨て身の“愛”。尾崎豊の I Love You 的なつかのまの小楽園から追いやられ(サイアク地へと追いつめられ)た主人公青年ジョンドゥの、意表つく太い太い伏線回収のその行動! 「ドラマ」という外来語の語源はギリシャ語の「ドラーマ」だそうだ。その意味は「行動」なんだと。これぞザ・ドラマ!!!
演じたソル・ギョングの身体能力(体格面ふくむ)が映画をいろいろ支えてた。

てことで、泣ける傑作。
しかし、これのわずか二年前に一世を風靡したんであろう『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の影響をどうみるか。。

① 手持ちカメラで常に画面ゆらゆら
② 視覚障碍進行中の異国人役のビョークのうにゃうにゃな動き/社会から疎外された男女の発達障碍表現や脳性麻痺表現
③ 現実の桎梏から突如自由になる空想シーンのちりばめ(ミュージカルビョーク/ムン・ソリが演じる健常化コンジュ)
④ 身近な悪役(かなり悪いヤツら)を用意
⑤ 警察沙汰
❻ ビョークのワーストエンド/必ずしもバッドじゃなさそうなジョンドゥとコンジュの未来 

つまり、❻の救済テイストのオリジナリティー(とキーワードそのものとしての大成功してる題)を除けば本作は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』の韓国“翻案”映画だ。②③④⑤はまあいいが、問題は①。オブジェクトも枠も静まってる場面が平気でゆらゆらぷるぷるしつづけるから、気が散るし、疲れさせられる。撮影者の息づかいとかそんなのを私は感じたくない。プロは透明にならなくちゃ。“まるで機械みたいにピタッと静止”する技能がない者は、道具をちゃんと使わなきゃ。

あと、ヒロインのコンジュのアセスメントは「思考力や情緒には問題ない」「発声発語が不自由。緊張時以外は少し喋れる」「身体的な自立度はきわめて低い」の三点明白。なのに周囲の腹黒い者たちは「彼女が何考えてるかなんて知らないよ」、警官も福祉関係者らも指差しボードとか使うという発想を持たず芋虫扱い。2002年頃の韓国社会はそうだったのか。健常者並みの計算高さがありそうなジョンドゥの、無弁解も、そして弁護士なしも、気になった。2019年の日本で鑑賞してる私がとやかく言うことじゃないんだろうけど。
でも、ジョンドゥがいつ頃からどれぐらいコンジュを異性として好きになってったのかわかりにくく、前半いきなりセックスっぽくなるとこにはオイオイオイだったし、コンジュの側の恋愛心理ふくめてプロットを左右する重要なあちこちが雑だったかも。

とはいえ、人間讃歌の傑作。観てよかった。ありがとう。「将軍」と「姫」のオリジナリティーも素敵だったよ。そしてやっぱりオアシスへの澄んだ作り手たちのまなざし!

弟役、ちょっと好き。