賽の河原

オアシスの賽の河原のレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.5
休日なので何観ようか迷いましたけどもう疲れ果ててるんでね。
ラース・フォン・トリアー最新作も『海獣の子供』も疲れそうなんでパスですよね。
最終的に近くでやってたイ・チャンドン監督特集の『オアシス』観ましたけどね。普通に傑作でしたね。
私自身、イ・チャンドン監督作品弱者でこの前の『バーニング』も村上春樹作品の映画化としては文句言ってましたけど、映画自体のクオリティは非常に高くて。
本作に関しても文句のつけようのない非凡な作品だと思いましたね。
前科三犯マンの青年と脳性麻痺のコンジュさんのラブストーリーですけども、まあ最近の作品で言うと『岬の兄妹』なんかに影響してるんじゃないかと思いますが、要は前科ありマンっていう社会的にみたらダメな人間と脳性麻痺っていういわゆる「弱者」ですよね。要は虐げられている人たちのラブストーリーですよ。
正直、映画全体で起こることは非常に起伏が少ないんですよね。映画全体で進む時間の流れの範囲の幅だって広くない。
ところがこの2人の距離が近づいていく描写が極めて丁寧。133分の上映時間を大胆にに2人の距離が近づいていく機微を描くために使ってますよね。
倫理的にも最悪に近い最初の距離から、それが近づいていく描写の細やかさ、かと言えば映画ならではのマジックを使った飛躍力、本当に素晴らしいですよね。
それを決定的なものにしているのは脳性麻痺のコンジュを演じるムン・ソリのズバ抜けた演技ですよね。本当に患ってる人にしか見えないんですよね。人間どうやったらこんな演技ができるんですかね?っていうかこんな演技のディレクション、付けようとして付けられるもんでもないし「もし脳性麻痺じゃなかったら」シークエンスとの段差が凄すぎてね。とんでもないものが撮れてしまってますね。
『オアシス』というタイトルも見事ですけど、「普通の人々」が「普通」に生きている社会がある種の人々にとってはまさに砂漠のように厳しく生きづらい世界なんですよね。そうして虐げられたもの同士の育むラブストーリーがまさに『オアシス』そのものであり、その真実は彼らと我々観客にしか分からないというね。普通に生きていて想像のつかない世界のことを考えさせることは物語というものが持つ力だと思うので、本作の物語の力はスゲーなって思いましたね。服や食べ物周りの描写も凄く練られてるし、イ・チャンドン、映画撮るのうますぎて引きますわ。
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