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オアシスのharuのレビュー・感想・評価

オアシス(2002年製作の映画)
4.6
すごい映画を観た。


観終わった直後の感情をうまく整理することができず、その表現に落ち着くことが稀にあるが、この映画を観終わった瞬間の感情がまさにそれだった。



前科三犯で出所直後の男
脳に重度の障害を抱えた女


この、社会から斜めの目線で見られる2人の恋模様。


障害者というだけでなく、その女は男が自動車事故で殺してしまった被害者の娘という、なんともカオスな関係。



障害者の女役を演じた女優さんはとにかくすごい。終始重度の障害者として役を演じるわけだが、いま日本の女優でこの役を演じると決断できる人がいったい何人いるのだろうか。
車椅子にのった足の動かないクララ的な障害者や、余命わずかで髪の毛が抜けてしまった病気の人ではなく、視線もバラバラで常に身体が引きつっている重度の障害者だ。視聴前の想像をはるかに超えてくる。



そもそもこのテーマで映画を作ろうという勇気をもった人が日本にいるのだろうか。



そして社会から疎外されている2人の恋、という非常に重いテーマであるため、普通の恋愛映画に出てきそうな普通のシーンが妙に切なく印象に残る。
ラ・ラ・ランドのように渋滞の高速で踊り出すシーンや、駅のプラットホームで愛の歌を歌うシーン、洗濯しながら好きな色の話をするだけのシーンですら、妙に心に残る。



何より個人的にこの映画で1番好きなのは、コンジュ(障害者の女性)を守ろうとしている家族や知人たちが如何に表面的な味方であったかというのを感じさせるところだ。
コンジュが求めているのは心の通じ合いなのに、彼女を表面的に守ろうとする周囲の人間の中には、彼女の心の中を見ようとする人は誰もいなかった。
唯一、彼女から遠ざけようとしている前科三犯の男だけがそれをしていたのに。

コンジュがそれをわかってあげられる人で良かった。
だから辛い中でも希望につながるラストになったのだろう。
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