似太郎

アモーレス・ペロスの似太郎のレビュー・感想・評価

アモーレス・ペロス(1999年製作の映画)
4.5
【GODを反対から読むとDOG🐶】

同時代のタランティーノ作品(パルプ・フィクション等)に漂うある種の不条理感をさらに突き詰めた印象のある、荒廃したメシキコ・シティーを舞台にしたバイオレンス群像劇。名手、ロドリゴ・プリエトによる撮影が際立っている。

やはりメキシコ映画だけあってか、ルイス・ブニュエルにも近い不条理映画の芳香がする。イニャリトゥはタランティーノよりもワールドワイドで深刻ぶった作風が特徴なのか。全体的に宗教色が強い所はベルイマンやタルコフスキーなんかにも近い。

如何にもアメリカ的でポップな装いのタランティーノと比べ、ヨーロッパ的で厳粛な作風のイニャリトゥでは似て非なるものがある。タランティーノの『パルプ・フィクション』にも多少あったストーリー性の破壊と、本作でのそれぞれがバラけた三つの挿話の連関がどこか異母兄弟のような役割を果たしている気がしてならない。

軽薄なタランティーノと重厚なイニャリトゥでは、全く性格の異なる兄弟のような関係性にも感じる今日この頃。

『イントレランス』然り『死刑台のエレベーター』然り『現金に体を張れ』然り、この手のオムニバスものはやはり「神の視点」が導入されてるのだなぁ、と改めて痛感する。結局、無声映画時代からやってる事は何一つ変わってない。
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