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百万円と苦虫女のjiroのレビュー・感想・評価

百万円と苦虫女(2008年製作の映画)
3.6
いじめ、過去の過ちをどう意味付けするかはその人の主観に委ねられる。

普通に面白かった!
けど、なんともラストがいやらしい終わり方。

この前観た『凶悪』のピエール瀧がフラッシュバックしてきて、今回の温厚な役柄に少々戸惑い。笑

猫を捨てられた怒りで同居人の荷物を捨てがために、前科者になった鈴子が居場所を失い、現実逃避するように旅を始める。そんな鈴子の弟も小学校でいじめを受け、悩みを抱えていた。100万円貯まれば場所を変え、転々と旅する中で鈴子は自分に足りなかったものを見つけ成長する。というあらすじ。自分探しのために田舎に行きました〜っていうロードムービーではない。旅先で出会うのは心優しい人ばかりで、その人たちとのエピソードもクスッと笑えてほっこり。

例えば海でナンパしてきて、「俺たちソウルメイトだろ☆」とほざくチャラ男

桃娘になるのを阻止する口下手なピエール瀧

下宿先でネギを栽培する大学生中島。中島は鈴子を始めて家に呼ぶのに、部屋がめっちゃきたなかったりフライパン洗ってなかったり、雑なとこもあるんだけどなんせ優しくて気遣いができる。
さらっと女子を一次会で帰らせてあげるセリフ100点満点。参考にします。

以下ネタバレですが、

弟の手紙で気づかされた鈴子のセリフはけっこう良いこと言ってた。

「大人しく適当に愛想笑いしていたらトラブルなく過ごせると思っていた」
100万円貯め、自分の正体がバレたら場所を変えてと、鈴子は自分が前科者であることを告白して相手に受け入れてもらうという努力を怠っていました。最初の海の家ではそのことは一切触れず、次の桃農家では前科者であることは話せましたがそれ以上は話していません。しかし、ホームセンターで出会った中島にはうまく伝えることができ、だからこそ彼も受け入れてくれました。また逃げるように旅を始めたため、家族とも疎遠になり、弟に手紙を書くことも出来ていませんでした。

たしかに大人しくして、相手に干渉しない生き方は楽だけどこれでは何も状況は変わらないと。思ったことを敢えて言わないことも大事だけど、かといって「家族だから伝わる」「親友だから伝わる」と何も伝えないのもよくないと。「黙っていても伝わるなんて嘘だ。黙っていても伝わると思うなら黙れ。」とマイヘアも言っていましたが、伝える努力を怠れば深い人間関係を築くことはできないですね。

最後は中島がやらかしてしまいます。別れたくないという一言が言えなかったのも彼らしいけど、これが仇となり2人はおそらく会えずに離れてしまいます。まあ結末がどうなろうが、若い二人はこの経験から学ぶことがあったので明るい未来が待っているかなと思います。

ただ最後のカメラワークとか、2人の視線の先がボカしてるところがいやらしい。笑
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